高張力鋼板について [k56]
このHPの熱処理とは関係が深くない、普通は熱処理して使う用途ではない一般構造用鋼材(軟鋼板や型鋼など)ととともに、これも、一般的には熱処理をして使うものではない「高張力鋼板」について説明します。
これらの一般構造用鋼材や鋼板類は、鋼としての基本的な「強さ」とともに、穴をあけたり溶接加工をしても、それによる劣化などが生じにくいような成分設計になっており、基本的には、炭素量が0.01%以下 … など、非常に低くなるように作られています。
一般構造用圧延鋼材のSS400は400N/mm2 の強さがあるのですが、自動車用のボディー用の鋼板などで、板厚が薄くても、強度を保つことができるという要請もあって、溶接加工やいろんな機械加工をしても割れなどの問題が起きにくい、一般構造用鋼よりも強い鋼板として開発されてきたのが高張力鋼板です。
高張力鋼板は ハイテン(High tensile strength steel)や高抗張力鋼板などと呼ばれます。
この、一般構造用圧延鋼材SS400の引張強さを超えるものが高張力鋼 … という分類も明確ではなく、高張力鋼板に対する分類やとらえ方については統一されていないのが実情で、一般的には、加工性・溶接性などを維持しつつ、引張強さを高めた鋼板で、規定では340N/mm2(35kg/mm2)以上のものが高張力鋼板に分類されます。
さらに一般的ですが、SS400以上の引っ張り強さの特性を持つ鋼板を高張力鋼板と呼ぶこともあります。
この高張力鋼板の使用目的は、高張力鋼板を使用すれば従来鋼板よりも薄い鋼板で強度を確保できることになって、鋼材使用量が減らせる「軽量化効果」のほかに、政府戦略的には資源の節約や温室効果ガス削減につながることまでを想定して、その製造や使用が進められています。
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高張力鋼板の優劣を評価する場合は、高い強度による重量の軽減以外に、じん性面での延性、展性、加工性での絞り性などもあわせて対象にして評価されます。
このうちでは特に溶接性は重要で、溶接の接合性や溶接後の割れなどが起きないようなものが要求されますし、強さについても、近年では引張強さ980MPa以上の「超高張力鋼板」と呼ばれるものも開発されています。
これら高張力鋼板の製造方法は、成分調整による強化のほかに、プレス加工や熱処理(焼入れのような急冷)を加えるなど様々な方法で製造されます。
これらの製品の持つ高い品質が自動車の軽量化として貢献しています。
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