工具鋼 (こうぐこう) [k52]
主に、工具、治具などに使用される鋼材としてJISなどでは用途別に分類されています。
成分や合金元素の種類や量も広範囲で、熱処理によって得られる性能も多岐にわたっていますが、雑誌「特殊鋼」では、下表のように、しばしば、冷間金型用鋼、熱間金型用鋼、プラスチック金型用鋼、高速度工具鋼に分類されています。
しかし、例えば、熱間工具鋼に分類されるSKD61は、冷間耐衝撃用鋼として使われるなどで、必ずしもその分類された用途のみで使うというものではありません。
特に工具鋼はメーカー名で呼ぶのがいい
下に示す表中の鋼種を見ても、JIS品(JISにある鋼種名)に加えて、メーカーがある部分の特徴を出すようにした類似鋼種なども多く販売されているのがわかります。
そしてまた、JIS品といえども、各メーカーはJISで決められた品質以上に品質が高いものを製造していますので、特に工具鋼においては、JIS鋼種名ではなく、メーカー名で呼称したほうがメーカーの特徴を熱処理時に反映できるなどの利点があるので、通常から、JIS名でいうのではなく、メーカー名で呼ぶ習慣をつけておいたほうがいいでしょう。
例えば、SKD11でも、各社それぞれの特徴があるので、SLD(プロテリアル(旧:日立金属))、KD11(日本高周波鋼業)、CDS11(不二越) … などのように、各社の鋼種名で呼んだほうがいいということを覚えておいてください。
当然のことですが、工具鋼以外の鋼種を「工具」にして使用することは全く問題ありませんので、安価な鋼種をつかって、うまく熱処理して使えばいいのです。
鋼種分類は使用する用途の目安
製鋼メーカーの大同特殊鋼さんは、鉄鋼を次のように分類して製造販売しています。
①構造用鋼 ②工具鋼 ③ステンレス鋼 ④耐熱鋼 ⑤超合金 ⑥ばね鋼 ⑦軸受鋼 ⑧快削鋼
その中の工具鋼は、「切削工具、金属やプラスチックを成形する金型に用いられる鋼」として定義されています。
さらに、日本のほとんどの鋼材メーカーが加入する「特殊鋼倶楽部」が発行する雑誌「特殊鋼」のデータには、下のように各社の鋼種が掲載されています。
ここには、鋼材メーカーが製造する数多くの鋼種のうち、各社が市販していて、比較的入手しやすい鋼種が掲載されています。
すなわち、これは、ここに掲載されていない鋼種は、通常では入手しにくいものと考えたほうが良いと言えます。
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どんな鋼種も入手できるというものではない
工具鋼は少しの成分の違いで、熱処理によって大きく特性が変化するので、汎用鋼として市中で販売され流通している鋼種は意外と少ない状況です。
さらに、下の表に掲載されている鋼種でも、入手が困難な場合も少なくありません。
これは、工具鋼の製造される量(これは製造ロットという呼び方をされます)は構造用鋼などの汎用鋼と違って、非常に小ロットであり、さらに、全てのサイズが製造されているものではないことや、メーカーと問屋などで形成する流通形態が決まっている … など、様々な理由があります。
極端に言えば、カタログに載っていても手に入らない場合がある … のです。
でも、たとえば、購入する鋼材店に在庫がない場合は、他の問屋さんから取り寄せてもらうなどの方法になるのですが、手数料などが加わるので高価にはなるなどもあって、鋼材調達は難しい問題もあります。
もちろん近年では、WEBで目的の鋼材を入手できる場合もあります。
日刊工業新聞などには、鋼材単価が掲載されていますが、そこに掲載されている価格は一つの目安で、小口では手数料や歩留まりの低下のために高価になるのは仕方ありません。
ちなみに、ひも付きでメーカーから購入する工具鋼がキロ単価800円であったとしても、市中で購入するとキロ当たり3000円、さらにWEBで購入するとキロ当たり1万円以上になっていてもおかしい話ではありません。
このようなことから、いかに安く鋼材を入手できるかどうかは非常に重要なことですし、それ担当する人は大変です。
【参考】雑誌「特殊鋼」に掲載された工具鋼一覧表




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