経年変化 (けいねんへんか) [k40]
室温で長期間経過して寸法や形状が変化することを経年変化といいます。
熱処理では、これを防ぐために、安定化処理、時効処理、サブゼロ処理などが行われます。
熱処理をした品物は時間が経過すると寸法形状などが変化する場合があリます。
これを経年変化や時効変化といいますが、その原因は、応力解放、焼戻し効果によるもの、残留オーステナイトの分解による組織変化・・・などで説明されています。
【応力の開放】
硬さの上昇は、言い換えれば内部応力の増加です。これが長時間かけて、品物各部に応力を与えますので、それによって変形が生じると考えられます。
【焼戻し効果の影響】
一般に、焼入れした鋼は焼戻し温度に伴う硬さ変化とともに寸法も変化します。
それは「温度(定数+log時間)」のように温度と時間の関数であらわした焼戻しパラメータで表されることもあります。
この場合は、時間による変化は対数としてlogであらわした時間で作用するので、温度の影響に比べて非常に少ないものですが、これが非常に長時間になれば硬さの低下などが生じて、組織の変化から寸法が変化することになリます。
PR【残留オーステナイトの影響】
冷間工具鋼のSKD11などでは、焼入れ時に20%以上の残留オーステナイトがあり、それがあれば、それは不安定な組織のために、時間とともにマルテンサイトやその他の組織に変化するので、このために経年変化が生じる可能性が高いと言えます。
【対策】
経年変化を少なくする対策としては、①焼入れ時の残留オーステナイトを少なくする ②サブゼロ処理、高温焼戻しでそれを少なくしたり無くす ③充分な焼戻しをする・・・などの対策が考えられます。
しかし、本来、熱処理して高硬さにするのは内部の応力を高めることであり、残留オーステナイトなどの不安定な組織は完全に除去することも難しいので、完全に経年変化をなくすのは困難であるといえます。
ゲージ類にはしばしば、SKS3をサブゼロして使用されることも多いのですが、この鋼種は経年変化しないというのではなく、経年変化が少ないという理由でこの鋼種が利用されています。
また、サブゼロをすると残留オーステナイトが無くなる・・・という説明をされる場合が多いのですが、必ずしもそうではありません。
SKD11や8%Cr系工具鋼で、液化炭酸ガス温度(-80℃程度)を用いたサブゼロしても、それを少なくすることはできますが、完全になくすることは難しいと言えます。
もちろん、-180℃程度のクライオ処理をしても、10%以下にはなりますが、同様にゼロにすることはできません。
サブゼロによって残留オーステナイトを完全に無くすることは無理で、残留オーステナイトは、560℃以上の高温焼戻しをしない限りはなくならないでしょう。
高速度鋼(ハイス)などは、500-550℃の焼戻しで高い硬さが出るために、通常はその温度で焼戻しして使用されます。
この温度では、完全に残留オーステナイトが分解されているかどうかは微妙ですし、また、経年変化の原因は残留オーステナイトだけではなく、内部応力の影響から、完全にそれをなくすことは難しいのです。
このような500℃以上の高温焼戻しは、250℃以下の低温焼戻しの比べて、その経年変化を防止する効果は高いのは間違いありませんが、なくすことはできません。
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