形状記憶合金の熱処理 [k39]
形状記憶合金でたくさん製造されているのは、チタンとニッケルの合金で、「ニチノール」と呼ばれるNi55%-Ti45%の合金が有名です。
もちろんこれは、鋼ではないので、本来はここでの話題ではありませんが、鋼に関係ある用語が出てくるので、簡単に取り上げています。
形状記憶合金は、熱処理をしたのちに、変形させて、その後に少し温度を加えると、元の変形させる前の形状に復元するという性質がある合金です。
同様の成分系では、「超弾性」という、変形させた後で、外力を取り去ると、元の形状に戻る性質を持った合金があります。
形状記憶合金は、低温ではオーステナイト状態の組織になっていて、外力を加えて変形させると、オーステナイトがマルテンサイト相になり、再び温度を上げると、オーステナイトに戻って、元の形状に戻る性質から、温度差を利用して作動するアクチュエーターやバネなど、いろいろなものに使用されています。
オーステナイト系ステンレス鋼の場合でも、溶体化処理をしてオーステナイト状態のものを強変形させたり、-180℃以下の極低温にすると、一部がマルテンサイト化することがあるのですが、そのオーステナイト~マルテンサイト~オーステナイトという変化が、100℃程度の温度変化で変わるというようなものですね。
形状記憶効果や超弾性効果のある合金は、Ni-Ti合金の他、Ni量を調整したり、CoやCuなどを加えた合金にしているものが多く、熱処理をして、それを塑性変形させた後に-30℃から100℃程度の適当な温度にすると、もとの形状に回復します。
これを形状記憶と言っています。
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この合金に対する事前の熱処理は、500℃程度の温度から水冷します。
それを変形させた後に、100℃程度の温度(回復温度)に加熱すると、変形前の状態に戻るという特異な性質があります。
形状記憶合金の線材を使ってバネなどを作てみるといいのですが、 ①例えば、バネ形状に加工します。 スプリングバックが大きい場合には、必要な場合は650℃程度で焼きなましする場合もありますが実験なので、焼なましはせずに進めましょう。 → ②熱処理(450-500℃に加熱後に水に入れて急冷します) → ③この状態で製品の状態です → ④これを引っ張ったり縮めたりして変形させます → ⑤回復温度に加熱すると元の形状に戻る(合金成分によって回復温度は異なりますが、-10℃~100℃程度)で、④と⑤を繰り返すと、形状記憶効果が確認できます。
私が形状記憶合金を熱処理をした例では、加熱中の酸化を防ぐためにソルトバスで加熱して急冷して熱処理したのですが、ニッケル合金なので意外と耐酸化性が高いので、短時間加熱でOKなので、空気中での加熱で問題ありません。
しっかりと指定の温度になって急冷するだけで、特に長い温度保持は不要です。
遊んでみるのも面白いでしょう
Amazonや楽天の商品記事を見ると、線材としていろいろな商品が販売されています。安価なものですので、直線の線材のまま実験してみると面白いでしょう。
回復温度を超えた高い温度に加熱してしまったり、変形が大きすぎると完全に元に戻らなくなるので注意しながらいろいろな状況を見てみると面白いと思います。
実験ですから、うまくいかなければ、再熱処理すると、ほとんどは問題ありません。
温度がわかる加熱炉がないと大変なようですが、450-500℃は、品物が赤くならないような温度ですから、赤熱が見えないような温度で加熱した後、水冷して、それを曲げてみましょう。
その後に、遠火であぶるかお湯につけて100℃程度に加熱すると、まっすぐになっていく変化が確認できます。
温度が正確なほうがいいのですが、実験ですから、鉄製のフライパンなどをガスコンロでいろいろな温度に加熱するなど、試行錯誤しても、それなりの結果が得られますのでトライしてみてください。
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