均熱 (きんねつ) [k33]
温度を一定に保って加熱することをいいます。
熱処理では「加熱中の品物全体が目的温度になる」という意味で均熱という言葉が用いられています。
また、製鋼時の造塊時には鋼塊内外の温度差があると品質ムラが出るので、再加熱して鋼塊内外を同じ温度にすることを「均熱」と言い、それをする加熱炉では「均熱炉」といわれるものを使用します。
それでは、均熱の温度許容範囲はどの程度なのでしょう? 以下は少し本題から離れた内容で、熱処理での均熱についての余談を書いています。
均熱とはどのような温度範囲内をいうのかは難しい問題です。
熱処理では、通常の加熱設備(炉)は有効寸法とは別に「有効加熱帯寸法」というものがあり、その温度精度(温度の許容値)について、例えば、焼入れ炉では目的温度に対して±10℃というように管理されています。
つまり、均熱というのは、「全く同じ温度」という意味ではなく、この程度の温度であればいいと熱処理を行う側は考えています。
この場合の上下で20℃の温度差は「均熱」かどうかという疑問があるのですが、有効寸法いっぱいに品物を入れる場合は、実用的にはこの程度と考えておけばいいし、小さい品物はもっと温度差が小さいということになっているという状況です。
もちろん、取引間の問題を避けるために、JISでは、温度精度(温度分布の上下幅)については取引者間で協議する・・・としているのですが、協議しても、現実的には温度分布の実態を示すだけで、どうしようもできないものと言えます。
PRこの品物各部の温度差20℃ですが、鋼の焼入れ800-1200℃に対する20℃ですので、特にそれを気にするというものではないと思っていますが、焼戻しでは各部の硬さの変化が現れます。
そのために、実施の熱処理作業では、①焼戻しごとに品物の配置を変えたり、②違う炉を利用したり、③やや低温にして、時間をかけて焼戻しするなど、様々な対策をとって硬さムラを減らす工夫をします。
経験的には、焼入れ炉における均熱性(温度精度)は10℃程度でも問題にはなりませんが、現実的には、焼戻し炉の場合には、少し大きな炉になると±5℃を確保するのが難しく、すこし大きな品物で、500℃以上の高温焼戻しで硬さを決める工具鋼などでは、炉内温度差が10℃違うと硬さむらが生じるので、このような品物は温度精度の良くない加熱炉では、要求される硬さ範囲(例えば、HRCで1以内の差に入れる・・・など)を指定されれば、それに入れる事が難しくなる場合もあります。
これは、費用をいただけるのであれば何でもできるのですが、コストと納期があるので、熟練した熱処理作業者は、精度の悪い焼戻し炉を使って、勘を駆使して硬さの均一化をやっているのには感心します。
このように、熱処理の現場では、炉内の温度分布を把握したうえで温度の保持状態を管理する「熱処理技術」や「匠の技」による神業としか言いようがないケースもまだまだ多いのですが、このような熟練作業者は年々少なくなってきています。
PR
(来歴)R1.8 見直し R2.4 CSS変更 最終確認R6.1月