機械試験(きかいしけん) [k23]
硬さ、じん性、強さなどの機械的性質を調べる試験のことをいいます。引張試験、衝撃試験など沢山の種類の試験方法があります。
機械試験の種類は多岐にわたっており、
強度などを評価するもの(引張・圧縮・せん断・曲げ・ねじりなど)、
硬さ試験、
高温での評価試験(クリープ試験など)、
破壊靭性試験(シャルピー衝撃試験など)、
疲労試験、
成形性の評価(エリクセン試験など)、
耐圧試験、
・・・など、JISやその他の団体規格等に規定されているものだけではなく、それ以外にもあって、分類するのも大変なほど、たくさんの試験方法があります。
これらは、試験機、試験方法、試験片などが規定されていますので、(ここでは個々についての説明はしていませんが)通常はそれに沿って機械試験をします。
PR熱処理に関係する試験では、引張、衝撃、疲労、摩耗、その他の耐用試験・・・などがあります。
高硬さのものを扱うことの多い工具鋼鋼材の評価においては、同じ試験方法であっても、試験機や試験条件、試験片形状、試験片の採取位置などが異なると、相関や互換性がなくなるものが多いので、試験結果を比較する場合はこれらの条件を揃えたものでないと比較できないことに注意しておかなくてはなりません。
鋼材のカタログなどには「標準熱処理条件における各種の試験値と硬さの関係」が示されるものが多くあり、その試験データを利用して鋼材の機械特性を推定することができるので、非常に便利になっています。
このことから、引張・圧縮などの「強さ」は値は「硬さ」で代替できるので、硬さ測定が簡単に行えることや非破壊試験であるために、ほとんどの熱処理品の検査は「硬さ試験」のみしか行われていないのが現状です。
このため、硬さと機械的性質の関係を意識していることはいろいろなことに役立ちます。
熱処理と機械試験値
これらの図のように、熱処理(ここでは、焼戻し温度を変えて硬さを変えること)によって機械的性質を変えることができるということが示されています。
このように、カタログなどにある試験の多くは、硬さとの関係が示されているものが多いのですが、これらの図表を深読みすることで、個々の試験をしなくても、製品品質の機械的性質が推定できます。
上記の図でみると、S40Cの例では、φ25とφ14の例が示されていますが、このような焼入れ性の低い鋼種では、少し試験する寸法が異なると、試験値が変化することがわかります。
また、SKD11(右図)の図からは、常用される60HRC程度の硬さでは、硬さが高い割には引張強さが低いことが示されています。
これらは機械設計や強度の推定や寿命延長のヒントとしても利用できるでしょう。
PRこれらは、熱処理で変化する機械的性質で、一般的には、硬さ=強さ といえますので、硬さを高めると、引張強さ、耐力などは上昇し、衝撃値は減少することから、これらの試験データを利用して、硬さを変化させて時の機械的性質が推定出来ます。
もっとも、熱処理によって変わる性質とそうでないものがあります。
たとえば、物理的性質であるヤング率や熱膨張率などは、熱処理では大きく変えることができません。
しばしば、焼入れをして硬くなった鋼は、「外力を受けても曲がりにくくなる」とか「変形しにくくなる」 という説明や解説をする人がいるのですが、この表現は微妙です。
これは、理科や「ハリとたわみ」などで習った物理的性質の内容で、熱処理によってはほとんど変化しないもので、SS400の軟鋼と60HRCに熱処理した鋼でつくった1cm角の棒を橋のように渡して置くと、たわむのですが、どちらのたわみも変わりません。これは、熱処理では変えることの出来ない特性ですね。
耐摩耗性についても、硬さが高いと耐摩耗性は高いのですが、たとえば、カミソリなどの鋭利な刃物では、できるだけ硬さを上げるのがよさそうに思いますが、 硬さを高くすれば「もろく」なって、小さな欠けが発生して、急激に寿命が短くなることも多いのです。
このように、機械試験などの評価と、実際の寿命などについては、カタログなどにある試験結果だけではなく、その他の知識をあわせて考えなければならない場合もあります。
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