火炎焼入れ(炎焼入れ)鋼について [k05]
バーナーなどの炎を用いて焼入れすることを「火炎焼入れ」「炎(ほのお)焼入れ」といいます。(→こちらの「炎熱処理」に関連項目あり)
炎熱処理に適した鋼材として、バーナーなどで加熱して放冷すると焼入れ硬化するように作られた鋼種は「火炎焼入れ鋼」とよばれます。
通常の工具鋼をつかって、バーナーで焼入れ温度に加熱後に、油冷や空冷で硬化させれば、火炎焼入れ鋼を用いなくても焼入れできますが、火炎焼入れ鋼では、バーナー加熱の火炎焼入れがしやすいように、また、先端部分の加熱後に、空冷でも充分な硬さになるような焼入れ性の高い鋼種として作られています。
これらの鋼種は、マンガンの焼入性向上を利用しているものが多く、ダイス鋼(たとえばSKD11)などのクロムCr系のものよりも、焼入れ温度が低くて、安価な鋼をいう場合が多いようです。
火炎焼入れ鋼とよばれる鋼種は、普通は「空冷鋼」をいいますが、焼入れ特性が良いことで、バーナー加熱をしないで、少し大きい品物であっても、通常の全体加熱~油焼入れ をして充分な硬さが得られることから、通常の部品用に使用される場合もあります。
ただし、焼入れ性が良すぎるので、複雑形状のものは、熱処理変形したり割れやすいので、注意が必要です。
火炎焼入れ鋼は、火炎焼入れ(炎焼入れ、フレームハードともいいます)用の材料として開発され販売されていて、下の写真のように、抜き型などの切刃部分だけを加熱しながら炎を移動すると、そのまま空冷で硬化することから、大きな金型の先端(切刃部分など)だけを硬化させる型材など向けに開発された鋼種です。
焼入れ温度の許容幅が広くなるように設計されており、通常の鋼種は50℃程度の温度幅のものが、火炎焼入れ鋼は100℃の焼入れ温度幅があっても、焼入れ硬さのばらつきが少ないのが特徴です。
本来の用途は、部分的に硬化させて使用する、低負荷の冷間成形用金型材等の用途に製造され販売されているものです。
成分的には、焼入れ性を上げるためにマンガンMnによる焼入れ性を高めており、SKD11などのクロム系の鋼種に比べて耐摩耗性が若干低いのですが、焼なまし状態での機械加工性がよく、鋼材価格もダイス鋼より安価なものが多いことで、フレームハードではなく通常の熱処理で、油焼入れをして通常用途の機械部品などにも使用されています。
流通している鋼種では、プロテリアル(旧:日立金属)のHMDシリーズのHMD1やHMD5、大同特殊鋼のGO5、愛知製鋼のSX105Vなどがあります。
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