カーボンポテンシャル [k02]
雰囲気の炭素濃度(炭素当量)のことで、「CP」と表示される場合もあります。
鋼を高温に加熱中に、この炭素濃度が鋼材の濃度よりも高いと浸炭し、低いと脱炭します。
浸炭熱処理において重要な指標です。
CO(一酸化炭素)を含む炭素濃度の高いガスを炉内に入れて高温の鋼に接触させることで鋼表面の炭素量を上昇させるのが「浸炭」熱処理です。
基本的には、共析鋼(約0.8%程度の炭素量)かそれ以上の炭素量になるような雰囲気にするために、炉内ガスから分解生成された水蒸気の露点を計測して炭素濃度を管理します。
露点とCP の関係から露点を利用します
古くから「露点とカーボンポテンシャル」の関係がわかっていますので、露点を測定することで炭素濃度の管理が行われてきました。
この露点とは、気体が冷却されて、その中の水蒸気が水になって凝結する温度を言います。
近年では、連続的に直接に炭素濃度を計測できる計測器が使用されており、比較的機器類も安価な ジルコニア式酸素センサ(燃焼性ガスが含まれる場合は測定できない)や赤外線センサ を用いて、効率の良い方法で自動的に濃度を管理して熱処理が行われています。
どのような熱処理設備(加熱炉)も炭素濃度が管理されているというものではなく、製鋼所の鋼板製造設備などのような大規模な加熱炉などでは雰囲気調整は行われているものが多いのですが、通常の大気加熱の焼入れ用の熱処理炉などでは、雰囲気ガスの炭素濃度の調整を行うことが少ない状況で、そのような大気炉では、燃焼時の酸素比などで熱効率をよくするための排ガス組成の管理が行われる程度で、(好ましいことではないのですが) 酸化に伴う脱炭が生じる傾向になっている場合が一般的です。
光輝性の維持や脱炭を避ける必要がある場合には、窒素ガス雰囲気や真空を利用した熱処理炉が用いられますが、これらは、空気を排除して、加熱中の酸化を防いで脱炭を防止するという考え方です。
さらに脱炭を防止する必要がある場合などは、炉気中にアルコールなどの炭化物系の添加液を用いて分解ガスで炭素濃度を調節する方法なども行われます。
PR一般熱処理でいろいろな成分の鋼種を同時加熱して熱処理する場合には、鋼種に合わせてカーボンポテンシャルにするのが基本ですが、すべての鋼種にあわせて調整することが事実上困難なこともあるので、すべての鋼種に適したカーボンポテンシャルで操業していない場合もあります。
このために、鋼種によって、脱炭傾向になったり浸炭傾向になったりすることは避けられません。
多くの熱処理品は熱処理肌のままで使用するということはほとんどなく、研磨などの仕上げ加工が行われることもあって、脱炭による硬さ低下がないような程度の状態に炭素濃度の状態を考えるのが一般的です。
つまり、すべての鋼種にあったカーボン濃度にしているのではなく、硬さに影響しない程度の炭素濃度の幅で管理されているというのが実情です。
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