熱処理用語の解説

ひも付き (ひもつき)        [h18]

鋼種やその仕様で製造された鋼材が、メーカー~鋼材問屋~需要先と流通していくときに、あらかじめ、取引方法を定めた流通形態の慣用的な呼び方(業界用語)です。

そのようなあらかじめ決められた鋼材価格を「ひも付き価格」といいます。

これに対して、鋼材屋さんが通常に販売しているものを(一般的に流通している鋼材)「市中品(市中材)」「店売り」などと呼び、その鋼材価格は「店売り価格」「市中単価」などの言い方をされます。

鋼材の流通は、何百トンという構造用鋼などの汎用材でも、数トン単位で製造される工具鋼鋼材でも、鋼材メーカーが直接需要先と取引することはなく、まず、一次問屋と呼ばれる大手鋼材店や鋼材商社を通じたルートを通りますが、鋼材の品質仕様や要求は鋼材メーカーと直接行ないます。

そのため、その要求元(鋼材店・需要家・エンドユーザーなど)とメーカー間の取引は「ひも付き」になります。

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JISなどに規定されている鋼種の仕様などは、最低限の取り決めしかないのですが、実際に流通・販売される鉄鋼種やその製造仕様や販売形態は千差万別で、すべての物を問屋や販売店が保有して、それを一般需要先に市販するのは非効率ですので、自然にメーカーから需要家に至る特定の販売ルートができるのは当然でしょう。

小ロットの工具鋼や特定形状のものなどは、消費先が限定されるので、特定の流通経路をとらざるを得ない場合が多くなるのは仕方がないことで、一般鋼材や構造用鋼などの汎用鋼でも、鋼種・形状・寸法に応じて取り扱い問屋(鋼材店)が決まっているのが通例です。

鋼は、基本的にはこのように特定のルートで取引されるのが通常で、この、メーカーから売り先までが決まっている流通形態が「ひも付き」になり、そこで決められる価格が「ひも付き価格」になります。

ある流通の時点で販売店などが在庫を持って一般に販売する場合の「店売り」「市中品」なども業界用語で、これも決まった言い方ではありません。

少し、鋼種名の話を取り上げますが、・・・

例えば、冷間工具鋼のSKD11はプロテリアル(旧:日立金属)ではSLD、大同特殊鋼はDC11という鋼種名で販売されていますが、これらは「SKD11」ではなく、「SKD11相当」という言い方をされますが、内容は、基本的にはSKD11です。

これらの鋼種の成分や製造工程などは、すべての品質はJISに包含されていますが、さらにJISを上回るような品質が規定されていて、JISに規定されていない品質に影響を及ぼす項目についても規定されて製造されているので、JIS鋼種であってもJIS鋼種以上の品質のものであるために、SKD11という名前ではなくて、メーカー独自の鋼種名で流通している・・・と考えるといいでしょう。

もちろん、愛知製鋼はSKD11としていますが、これも、JIS品質を上回る仕様で製造されています。

参考までに、その他の国内工具鋼各社のSKD11のメーカー名は、山陽特殊製鋼QC11、日本高周波鋼業KD11、不二越CDS11、などです。

このように、SKD11であっても、各社の品質は違うので、鋼材の流通形態は、メーカー各社毎の流通網が自然にできますし、その販売先も固定されるという図式になるのは当然でしょう。


日本製鐵とトヨタ自動車のひも付き鋼材価格交渉がニュースで取り上げられることもあるほど、大手企業の価格動向は経済的影響も大きいのですが、反対に、特に、工具鋼などでは2-20トン程度の比較的小規模のロットの場合は、鋼材メーカーと企業が直接取り引きすることも多く、小さなロットでも「ひも付きルート」が多くあるのが実情で、そのために、メーカーは流通の効率化のために、エンドユーザーとは直接取引しないで「問屋」を含めた流通ルートが決まっているのが一般的です。

もちろん、エンドユーザーが製造企業ではなくて鋼材店までが「ひも付き」で、その販売店が広く「店売り」する場合もあります。

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か行 かきくけこ
さ行 さしすせそ
た行 たちつてと
な行 なにぬねの
は行 はひふへほ
ま行 まみむめも
や行 やゆよ
ら行 わ行 らりるれろわ

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