ここでは、鋼をグラインダーで削ったときに出る火花の出方で、鋼種判別ができるということを紹介します。
鋼をグラインダーで削った時に出る火花は、鋼に含まれる元素やその量によって、火花の形状が変化するので、それで鋼種判定や成分推定をする試験が「火花試験」で、そのやり方は、JIS-G-0566 に規定されています。
これに沿って試験すれば、鋼種や鋼の熱処理状態なども推定する事ができるのですが、そこまでできるようになるには、簡単ではありません。
ここでは、誰でもできる方法で、違う鋼種かどうかを火花を見て判別できるということを紹介します。
【火花の例】(JISハンドブック)

このように、鉄鋼の成分によって、火花は特徴的な出方をします。
この基本的な試験の方法は、既定のグラインダなどの器具を用いて、火花が見やすい環境でグラインダーで鋼をこすって火花を出し、それを、成分が既知の鋼の火花と比較して、鋼種や合金成分の量を判定します。
2つの品物があって、もしも、2つの鋼種が違えば、火花の出方が違うので、簡単に鋼種を判別する程度であれば、だれでも簡単にできます
JISに基づいた、本格的な鋼種判定は技能と熟練度が要求されますが、異材の判別(同じ鋼種かそうでないか … )などは、少し練習するとできるようになるので、一度練習がてら、やってみてください。
ここでは、最低限必要な火花試験について紹介します。
火花試験は難しくない!
JISには「火花試験方法」が解説されていますが、それを習熟するのはかなり大変なことです。
ここでは、それを説明するのではなく、実用的に「化学成分が既知の鋼と試験する鋼の火花を比較する」程度であれば、特別なテクニックも必要ではなく、誰でも簡単にできます。
つまり、2つの鋼種が「同じか違うか?」が判定できれば、非常に利用価値があるので、それをやってみよう … というお誘いです。
火花試験の基本は、①花の咲き方で炭素量を見る ②花の形状や火花の色で合金元素の種類や量を推定する … ということで、火花の出方で鋼種や成分量が判別できます。
そうはいっても、グラインダーの種類や回転数、照度などの部屋の環境、鋼材の熱処理のあるなし … などの、いろいろな要素で火花の状態(火花の出方や色の様子など)が変わりますから、それに慣れるのは大変です。
しかし、鋼種の違いを見る程度であれば、室内の明るすぎない場所でグラインダを当てるだけで、鋼種が違えば、火花の違いが見えてきます。
ともかく、2つの鋼種が同じかどうかは、同じ条件で火花を出して、「見比べるだけ」です。
火花試験をするには、平型研削砥石が使える「ストレートグラインダー」がいいのですが、手に入りやすい「ディスクグラインダー」でもいいので、とりあえず、火花の先端が見えるような下のようなものであれば、用意しましょう。
そして、ともかく、グラインダーが手元にあれば、一度、鉄鋼の火花を出してみてください。

1鋼種の鋼種の火花を見て、その成分や鋼種を判定するには、かなりの熟練が必要ですが、2つの鋼材の火花を比べて、「同じ鋼種か違う鋼種かを判断する」ことは、比較的簡単にできます。
ぜひこのことを覚えておいて数回練習すれば、鋼種の違いが見えてくるでしょう。(こちらに関連記事)
熱処理での不具合は「異材混入」です
長年、熱処理に携わって来ましたが、毎年ごとの不具合で最も多いのは、数個の製品の中に、1つだけ、違う鋼種が混ざり込む … などのケースです。これを「異材混入」といいます。
例えば、5個のSKD11の品物の中に、S45Cの製品1個が紛れ込んでいるケースなどですが、機械加工のミスで1個を作り直した時に、ありあわせの材料で加工してしまうなどです。
この多くは、熱処理硬さ検査で見つかるのですが、そうなると、熱処理費用や再製作費用の損失も大変大きくなります。
もしも事前に、「同じ鋼種か、違う鋼種か」ということを確認できれば、損失が防げる場合もあるでしょう。
火花試験は非常に簡単ですので、一度、時間がある時に、練習してみてください。
少しやってみると、簡単に見分けがつきます。
数種の成分のわかった試験片(小さな鋼材)を用意しておくと、少し練習するだけで、異材判別や、それが、どの鋼種に近いか … などはわかるようになります。
もちろん、JIS規格表にあるような火花とは異なっているかもしれませんが、ともかく、判別できるのは確かです。
山本化学工具研究社さんから、火花試験用の試験片が発売されていて、それらを用いて練習することもいいのですが、違いの有無だけを見るのであれば、あえてそれを購入するほどのことはないでしょう。
火花試験は軽視される傾向ですが…
過去には、熱処理技能士の資格を取るには、その火花の判定能力が必要でした。
しかし近年は、その試験の実技も、写真を見て回答するものに変わってきており、熱処理技能士であっても、高度の火花判定能力のある人は減ってきているのが実情です。
同じ鋼種であっても、成分が同じかどうかを判定する場合は、熟練者でも火花試験でも難しい場合があるので、現在は、持ち運びできる「蛍光X線分析計」などが利用されています。
このような背景もあって、次第に高度な判定ができる技能者は減ってきているのですが、火花による簡易的な判定は簡便ですので、熱処理関係の人以外の方にもやってもらいたいと思います。
今回ここで紹介しているのは「比較判定」ですので、特に、グラインダーや砥石の仕様は考えなくていいですし、少し慣れてくれば、JISの火花試験方法を参考にして、細かい判定ができるようになります。
ポータブルな蛍光X線分析計による鋼種判定

蛍光X線分析計による鋼種判別
ポータブルな分析計を使うと簡単に成分分析や鋼種判定ができるようになっています。
簡単で確度の高い鋼種の判別が可能ですが、300万円もする高価なものです。
だからぜひ、時間のある時に、火花試験の練習をしてみてください。

