熱処理関連HPのインデックスと
鉄鋼はなくてはならない金属ですし、その特徴を位置づけるための熱処理も重要です。このHPでは、鉄鋼の熱処理について取り上げています。
鋼の熱処理について、熱処理の理論、材料、作業、設備、検査・試験などを、教科書的にならないように、現場的な内容を織り込んで広範囲に説明しています。
それぞれが長い文章になっています。パソコンなどの大きな画面で読んで頂くのがおすすめです。 また、熱処理用語については、下の「熱処理用語の解説」で用語別に説明しています。
ソルトバスは、溶融塩を使う、少しニッチな熱処理設備で、高速度鋼や特殊な熱処理ができることで使われていましたが、維持管理の難しさがあり、消えゆく運命にある少し変わった熱処理設備です。
INDEX(目次ページ)では、熱処理用語を「あいうえお順」で解説しています。
熱処理でよく質問を受ける内容や知っていると役に立ちそうなことを取り上げて説明しています。
金属せん断刃物の製造や基礎的な事項の説明をしています。 塑性加工で重要なせん断技術の基礎は昭和年代に確立されたもので、それ以降目立ったものがないので、当時の資料が現在でも通用しています。
現在でも、機械刃物の寿命延長は全産業において望まれており、寿命延長を考えるには、せん断理論のみならず、材料、熱処理の知識が不可欠ですから、それらの基礎を全般的に取り上げて説明しています。
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鉄鋼は生活や産業には最重要な金属
若い方には興味が薄いかもしれませんが、第2次世界大戦後には鉄鋼は「産業のコメ」と呼ばれて日本の復興と発展に大きく貢献してきました。
現在においても、鉄鋼製品は金属製品の中では最も多用されている金属です。
日本は、1970年代に粗鋼生産(溶鉱炉から出る鉄の量)が世界第1位になり、その後、1996年以降、中国に世界一の座を明け渡しましたが、その後も、日本国内の生産量はずっと1億トン前後で変わっておらず、現在も世界3位の粗鋼生産量で、日本のみならず世界の国を支えています。
熱処理対象の鉄鋼材料は全鉄鋼の22%
2022年の例では、粗鋼年間生産量は8785万トンで、その約78%は「普通鋼」と呼ばれる鉄鋼製品担っています。
この普通鋼は、このHPで説明するような内容の熱処理をしないで、そのまま建材や橋梁などに使用されるもので、その残りの約22%の鋼材が、製品になるまでの製造加工過程で何らかの熱処理をして使用する鋼種です。
また、その半分以上(約53%)が機械部品や自動車部品等になる「機械構造用鋼材(SC材やSCM材など)」ですから、どうしても、熱処理の説明では、機械構造用鋼の熱処理説明が多くなるのですが、その熱処理の考え方は重要です。
機械構造用鋼を除いた、熱処理をする残りの47%の鋼の内訳は、ベアリング鋼(SUJ)やバネ鋼(SUP)などの特定用途用の特殊用途鋼が38%、汎用的な金型部品や工具を作るための「工具鋼鋼材(SK材、SKS材、SKD材、SKH材など)」は9%で、特に熱処理の優劣が品質を決めるとされる「工具鋼」は、全鉄鋼生産量からみると0.2%以下と極少です。
しかし、工具鋼鋼材の熱処理は製品性能を決める大きな要素になるので、このHPでは工具鋼については、やや詳しく取り上げて説明しています。
PR熱処理を行うタイミング(時点)はさまざま
熱処理を種類ごとに説明するだけでも広範囲ですし、熱処理するタイミング(工程)も様々なので、それが熱処理を分かりにくくしているところもあるのですが、熱処理は、①鋼材製造過程で鋼材メーカーなどの鋼材製造工程中で行う熱処理と ②メーカーから出荷された後に製品を加工する工程中に機械加工工場や熱処理工場などで行われる熱処理 に分けて、このHPでは、主に②の場合の、鋼材を使用して製品にする途中の工程での熱処理を念頭にして説明しています。
熱処理とは『温度と時間とその変化度合い』を操作して目的の性質を引き出す操作をいいますが、残念ながら、品物のサイズや形状によってやり方や条件が変わります。
熱処理の成否によって工具や機械部品の寿命や性能に関係するものの、サイズによって変化するために、実際の品物をどのように熱処理するのかは重要なことですが、このHPに書いている対象のほとんどは、小さな試験片(例えば10mm丸程度の試験片など)を用いて基本的な性質を見たデータしかありません。
これが「熱処理」を理解しにくくしている要因の一つですが、いろんな大きさのもののデータをとっても、どの部位の特性を評価するのかが問題になるので、結局、小さな試験片のデータから、実際の品物の特性の引き出し方を学んでいくしかありません。
それもあって、このHPでは、教科書的な書き方だけでなく、一般の書籍でほとんど説明されていない「現場の熱処理」を含めることで、実際の熱処理について感じていただくようにしています。
つまり、品物が大きくなると教科書通りにならない
熱処理の教科書(書籍)では、基本事項(性質の変化)の理解のために、小さな試験片を用いたデータで説明されます。
しかし、実際の品物は試験片より大きなものが普通ですから、示されたデータの結果と一致しない場合が多くなるのですが、これを「質量効果」という言い方で避けてしまって、詳細は示されないことがほとんどですから、熱処理を学び始めの人は混乱することも多いと思います。
でも、品物のサイズ(質量)の違いごとにデータを取ることも非現実的ですので、ほとんどは小さな試験片のデータから読み取る(推定する)ということが求められます。
これも熱処理がわかりにくい原因であるのは否めませんが、このHPでは、総合的に実際の品物の熱処理結果を推定できるように説明していくことを心がけています。
熱処理資料の多くは1950年前後の古いものです
このHPで紹介している熱処理の基礎資料の多くは昭和年代のものです。
つまり、日本の鉄鋼産業が急成長した時期に作られた資料が多いのですが、基本的な考え方や熱処理による特性変化などは変わっていませんので、現在でもそれが使われています。
もちろん、現在の製鋼技術や鋼材品質は昭和年代のものとは比べ物にならないほどに高品質になっており、熱処理後の鋼材特性も当然向上していますし、現実的には、示されたデータと乖離するものもあります。
それもあって、データは結果の数値の絶対値を見るのではなく、温度・時間・速度などの熱処理要素による変化を読み取ることが必要になります。
さらに、熱処理の基礎的な部分の研究は昭和後期以降はあまり進展していませんし、今後も、大きくこのHPに示したデータが書き換えられることはなさそうですから、それに対応した理解のしかたも重要になります。
2000年前後からコンピュータ利用がすすみ、シミュレーションソフトウェアなども発展してきたのですが、大量生産品ならともかく、それを使っての品質予測も、そんなに進んだとは思えません。
それ以前にも、いろいろな数値で熱処理予測する「机上熱処理」というものもあったのですが、それよりも私は「焼いてみればわかる」という言い方をよくしていました。
ともかく、熱処理では、品質に影響するファクターが多すぎて思考が追い付かないので、その場合は実験してみることでかなりの予測ができることも多いのです。
そんな程度のものですから、わからないといって悲観するものでもないと思っています。
熱処理は円熟した加工技術
私(このHPの筆者)は1970年代に、鉄鋼熱処理と金属せん断刃物を作る第一鋼業(株)【本社は大阪市】に入社し、40年以上にわたって材料と熱処理などに関わる仕事をして、その間に、第一鋼業(株)が保有する多くの資料をもとに、第一鋼業の要請や協力で2003年頃から熱処理をHPなどで紹介してきました。
入社当時は業務用コピー機が出始めた頃で、コピー画質も良くなく、もちろん、PDFなどの電子記録もできませんでしたので、このHPには多くの古い紙の資料をコピーしたものもあり、醜いですがそのまま掲載しているものもあります。
もちろん、見にくいうえに文献の出所もはっきりしないものが多いのですが、近年に販売されている書籍では、同様のデータを見やすくしたものが掲載されていますので、じっくり勉強したい方は、下の参考書籍(熱処理技能士のためのテキスト:4,180円や熱処理ガイドブック:4400円など)がいいでしょう。
ここではAmazonや楽天の書籍ページを案内していますが、できれば、大型書店で実物を見て購入するのがおすすめです。
現場の熱処理では教科書(書籍)通りでないことも多い
上にも書いていますが、小さなテストピースで熱処理したものと現実の製品の熱処理は当然違っていることも多いのです。
例えば、品物が割れてしまう場合などの、どうしても教科書通りにできないことも出てきます。
だから、現場の熱処理とテストピースの熱処理との違いを多く紹介することや、「生きた熱処理」を感じていただくために、実験やシミュレーションした独自の図表など独自のものを使用して、できるだけ熱処理の疑問の軽減に努めています。
ただ、このHPは個人的な文書ですので、問題や疑問も出てくると思いますから、質問などはこちらのプライバシーポリシーページのメールフォームをご利用して問い合わせください。(もちろんすべてにはお答えできませんことをご了承ください) これは筆者あてメールで第一鋼業さんとは関係ありませんから、このHP内容について、第一鋼業さんへは問い合わせはしないようにお願いします。
鉄鋼熱処理はローテク
現在では、ある鋼種の機械部品を**の硬さにしたいということであれば、炉(加熱設備)のタッチパネルやパソコンなどに表示される条件や選択肢を選んで、炉(加熱設備)の前に品物を置いてスタートボタンを押せば、数時間後には出来上がって炉から出てくるという状態までパターン化や自動化されています。
もちろんそこには、1950年代の熱処理技術が生かされているのですが、平たく言えば、熱処理理論が必須でもありません。
しかし私は、熱処理のやり方やその結果の状態がわかることよりも、製品の最高品質状態を考えたり、早期破損などの異常が起きたときの対策や再発防止などに対応できるためには、熱処理を深く知ることが大切だと考えています。
今、熱処理現場では、急激に「標準化」が進んでいます。 標準化は、企業に与える利益も大きいのですが、深く考えない習慣が付き、積極的に改良することも滞りがちです。
そういう風潮に流されないで、材料や熱処理の真髄を理解し、寿命対策や問題処理のために少しでも役立てればいいと考えて今後もこのHP を運用していきたいと考えています。
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