鉄鋼の熱処理のページにようこそ
このHPは、鉄鋼の熱処理について紹介しています。内容は5つに分かれています。
鋼の熱処理で、熱処理の理論、材料、作業、設備、検査・試験などを、教科書的にならないように、現場的な内容を含めて、広範囲に説明しています。
長い文章になっていますので、パソコンなどの大きな画面で読んで頂くのがおすすめです。 熱処理用語の意味や簡単な解説は、下の「熱処理用語の解説」でも説明しています。
ソルトバスは、溶融塩を使って加熱冷却する、少しニッチな熱処理設備です。 ソルトバスを用いると、普通の加熱炉では難しい「恒温熱処理」という、特殊な熱処理ができます。 しかし、維持管理などの問題も多く、この設備は、時代とともに消えゆく運命にあります。
熱処理用語について説明しています。 INDEX(目次ページ)では、あいうえお順から熱処理用語の解説記事を検索していただけます。
多くの人が疑問に思っていることや、よく質問を受ける内容、知っていると役に立ちそうな熱処理関連の内容を取り上げて説明しています。
私は、金属せん断刃物の製造に携わってきました。この分野も、昭和年代にはいろいろな研究が行われましたが、当時の貴重な資料は時間とともに消えていっています。
機械刃物の寿命延長は全産業において究極の問題であり、それには、材料、熱処理などの知識が不可欠なことから、何かの役に立れるようにこの記事を書いています。
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また、各ページに第一鋼業のHPリンクがありますが、これは、熱処理依頼・問い合わせ、製品や加工の発注などの業務関連の問合せ用で第一鋼業の担当者が応対します。
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鉄鋼は地球上で最も有用な金属です
若い方には興味が薄いかもしれませんが、第2次世界大戦後には鉄鋼は「産業のコメ」と呼ばれて日本の復興と発展に大きく貢献してきました。
現在においても、鉄鋼製品は金属製品の中では最も多用されている金属です。
日本は、1970年代に粗鋼生産(溶鉱炉から出る鉄の量)が世界第1位になり、その後、1996年に中国に世界一の座を明け渡しましたが、その後も、日本国内の生産量はずっと1億トン前後で変わっておらず、現在も世界3位の粗鋼生産量で、日本の国を支えていることに変わりはありません。
熱処理対象の鉄鋼材料は年間全生産量の22%
2022年の例では、粗鋼年間生産量は8785万トンで、その約78%は「普通鋼」と呼ばれる鉄鋼製品が生産されています。
この普通鋼は、このHPで説明するような熱処理をしないで建材や橋梁などに使用される鉄鋼種です。
その残りの約22%の鋼材が、製品になる製造加工過程で何らかの熱処理をして使用する鋼種です。
この22%中の半分以上(約53%)が機械部品や自動車部品等になる「機械構造用鋼材(SC材やSCM材など)」ですから、どうしても、一般的な熱処理説明は機械構造用鋼の熱処理説明が多くなります。
熱処理をする鋼材のうち、機械構造用鋼を除いた残りの47%は、ベアリング鋼(SUJ)やバネ鋼(SUP)などの特定用途用の特殊用途鋼が38%で、汎用的な金型部品や工具を作るための「工具鋼鋼材(SK材、SKS材、SKD材、SKH材など)」は9%で、全鉄鋼生産量からみると0.2%以下の製造量です。
しかし工具鋼鋼材の熱処理は製品性能を決める大きな要素になるので、このHPでは工具鋼についてもやや詳しく取り上げて説明しています。
熱処理を行うタイミング(時点)はさまざま
熱処理を行うタイミングは様々です。
①鋼材製造過程で鋼材メーカーの製造工程中で行う場合 ②メーカーから出荷された後に製品を加工する工程中に行われる場合 があり、ここでは、主に②の場合の、鋼材を使用して製品にする途中の工程での熱処理を念頭にして説明しています。
機械部品や金型などの熱処理は工具や機械部品の寿命に関係します。
本来、熱処理とは『温度と時間とその変化度合い』を操作して目的の性質を引き出す操作をいいますが、残念ながら、品物のサイズや形状によってやり方や条件が変わります。
しかし、多くのケースのデータを作るのは煩雑ですから、ほとんどは、小さな試験片(例えば10mm丸程度の試験片など)を用いて基本的な性質を見たデータしかありません。
これが「熱処理」を理解しにくくしている要因の一つですが、このHPでは、教科書的な書き方だけでなく、一般の書籍でほとんど説明されていない「現場の熱処理」を含めることで、実際の熱処理を感じていただくようにしています。
品物が大きくなると教科書通りにならない
熱処理の教科書(書籍)では、基本事項(性質の変化)の理解のために、小さな試験片を用いたデータで説明されています。
しかし、実際の品物はそれより大きなものが普通ですから、教科書に示された結果と一致しない場合が多くなるのですが、これを「質量効果」という言い方で詳細は示されないことがほとんどなので、小さな試験片のデータとの違いがわかりにくいということが起きてしまいます。
でも現実的には、品物のサイズ(質量)の違いごとにデータを取るも大変なので、ほとんどは小さな試験片のデータから読み取る(推定する)ということが求められます。
これも熱処理がわかりにくい原因になっているのですが、このHPでは、総合的に実際の品物の熱処理結果を推定できるように説明していくことを心がけています。
熱処理資料の多くは1950年前後の古いものです
このHPで紹介している熱処理の基礎資料の多くは昭和年代のものです。
日本の鉄鋼産業が急成長した時期に作られた資料が多いのですが、基本的な考え方や熱処理による特性変化などは変わっていませんから、現在でも十分使用できるものです。
もちろん、現在の製鋼技術や鋼材品質は昭和年代のものとは比べ物にならないほどに高品質になっており、熱処理後の鋼材特性も当然向上しています。
それもあって、データは結果の数値の絶対値を見るのではなく、温度・時間・速度などの熱処理要素による変化を読み取るようにするのが正しいデータの見方です。
残念ながら、鉄鋼の基礎的な部分の研究は昭和後期以降はあまり進展していませんし、今後も、大きくこのHPに示したデータが書き換えられることはなさそうですから、それに対応した理解のしかたも重要になります。
熱処理は円熟した加工技術
私(このHPの筆者)は1970年代に、鉄鋼熱処理と金属せん断刃物を作る第一鋼業(株)【本社は大阪市】に就職し、40年以上にわたって材料と熱処理などに関わる仕事をしてきましたので、その間に、第一鋼業(株)が保有する多くの資料をもとに、第一鋼業の要請や協力を頂いて、平成15年頃から業務内容をHPで紹介してきました。
入社当時は業務用コピー機が出始めた頃で、コピー画質も良くなく、もちろん、PDFなどの電子記録もできませんでしたが、このHPには多くの古い資料をそのまま掲載しています。
もちろん、見にくいうえに文献の出所もはっきりしないものが多いのですが、近年に販売されている書籍では、同様のデータを見やすくしたものが掲載されていますので、じっくり勉強したい方は、下の参考書籍(熱処理技能士のためのテキスト)をおすすめします。ここではAmazonと楽天のページの商品紹介をしていますが、大型書店で実物を見て購入するのがおすすめ。
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熱処理技術入門平成16年全面改 金属熱処理技能士・受検テキスト [ 日本熱処理技術協会 ] 価格:4180円 |
現場の熱処理と教科書(書籍)と違うところも出てきます
上にも書いていますが、熱処理的に小さなテストピースで熱処理するものと現実の製品の熱処理は当然違ったものになることがあります。
例えば、品物が割れてしまう場合などは、どうしても教科書通りにできないことも出てきます。
だから、現場の熱処理とテストピースの熱処理との違いを多く紹介することや、「生きた熱処理」を感じていただくために、実験やシミュレーションした独自の図表など独自のものを使用するなどで、できるだけ熱処理の疑問を軽減しようとしています。
ただ、このHPは個人的な文書ですので、問題や疑問も出てくると思いますので、質問などはこちらのプライバシーポリシーページのメールフォームをご利用して問い合わせください。 ただし、このHP内容は第一鋼業さんへは問い合わせはしないようにお願いします。
鉄鋼熱処理はローテク
現在では、ある鋼種の機械部品を**の硬さにしたいということであれば、炉(加熱設備)のタッチパネルやパソコンなどに表示される条件や選択肢を選んで、炉(加熱設備)の前に品物を置いてスタートボタンを押せば、数時間後には出来上がって炉から出てくるという状態までパターン化や自動化されています。
もちろんそこには、1950年代の熱処理技術が生かされているのですが、特に熱処理理論が必要というものでもありません。
しかし私は、熱処理のやり方やその結果の状態がわかることよりも、製品の最高品質状態を考えたり、早期破損などの異常が起きたときの対策や再発防止などに対応できるためには、熱処理の理解が大切だと考えていますので、このHPの記事が役立てばいいと考えています。
今、熱処理現場では、急激に「標準化」が進んでいます。 標準化は、企業に与える利益も大きいのですが、「深く考えない人間」を増やしかねません。
そういう風潮に流されないで、材料や熱処理の真髄を理解し、寿命対策や問題処理のために少しでも役立てればいいと考えて今後もこのHP を運用していきたいと考えています。
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