刃物鋼 (はものこう) [h09]
【用語の意味】
現在はJISの用途分類にはありませんが、過去にはJISに規定されていたこともあって、この名前が残っているのですが、一般的には、刃物用途に使用される工具鋼の総称をいいます。
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【補足説明】
特殊鋼メーカーの日立金属(株)では、「高級刃物鋼」という名前のカタログを発行しています。
そこには炭素鋼系、合金鋼系、ステンレス系から炭素量が3%に達する粉末工具鋼系の材料などが掲載されています。
ここには「ノミやカンナ刃、包丁」などやカスタムナイフ用などを対象にして、冷間で用いる工具鋼の鋼種を主体に掲載されています。
当社の加工品部門では、鋼板などの鉄鋼をせん断する刃物をたくさん作っており、この材料には、長寿命の刃物材料が求められることから、高速度鋼や熱間・冷間ダイス鋼系の高合金材料などを多用していますが、これらの多くはJISに規定された鋼種ではない鋼種がほとんどです。
冷間で使用する工具では、おおむね58HRC程度以上の硬さに熱処理することができて、出来るだけじん性が高い冷間工具鋼系の材料が求められます。
また、赤熱する鋼塊などを切断する熱間用の工具(刃物)では、50HRC程度の硬さがあれば十分ですので、その硬さが得られて、耐熱性の高い熱間工具鋼系の材料が刃物用材料として使用されます。
このように、あらゆる工具鋼分野の材料が刃物鋼として使われていることになります。
カスタムナイフの製作を趣味とする方も多いのですが、近年では、これをハイスやマルテンサイト系のステンレスなどの高価な鋼材を使って作る人が増えているようです。
しかし、日本刀や高級包丁などの刃物は、特に、切れ味を重要視されるので、炭素工具鋼や低合金の工具鋼がこれに優れているために、今でも健在です。
日立金属カタログの一部
(来歴)H30.11 文章見直し