パーライトノーズ        [h03]

恒温変態曲線(S曲線)で、パーライトに変態する時間が短い部分の形が「飛び出した鼻の形」のようであるので、それを「パーライトノーズ」といいます。

これは、鋼の焼入れにおいて、焼入れ温度からの冷却で、そのパーライトノーズにかかると、パーライトやその他の組織が生じて、充分な硬さが得られなくなるので、焼入れでは、「パーライトが生成しないような速度で冷却する必要がある」・・・というような熱処理説明がされます。


共析鋼のS曲線恒温変態曲線(S曲線)の例

この、S字状に左側に飛びだした部分がパーライトノーズです。

この図は共析鋼の恒温変態を説明しているものですので、焼入れ過程のように「温度+時間変化」を加えて説明するのは問題もあるのですが、長年の熱処理の説明では、この図のように、焼入冷却の際に、ある温度で保持して時間経過すると変態する様子をこの恒温変態曲線に上書きして説明される場合がほとんどです。

この図は、ある温度(ここでは、410℃、300℃)で保持したときに、出現するベイナイトの形態や硬さが異なっていることを説明していますが、さらに、一般的な熱処理の説明では、この恒温変態曲線を使って、焼入操作の説明をされることがしばしばあります。(もちろん本来の使い方ではないのですが・・・)

例えば、焼入れで、550℃までを約1秒以内に冷却すると、このノーズにかからないので、そのまま温度を下げていき、Ms~Mfを経過して常温まで温度を下げると、非常に硬いマルテンサイトになる・・・という説明などでこの図が利用されます。

すなわち、約1秒で550℃以下に冷却しないと、パーライトという軟らかい組織が増えて、焼入れ硬さが低下するという説明ですが、上図は「恒温変態」を表した図のため、通常の焼入れのように、温度が低下していく様子を見るためのものではありません。

【連続冷却曲線(CCT曲線)】

「焼入れ速度と硬さの関係」は、下図のようなCCT曲線で示すのが適当ですが、S曲線を用いるほうがイメージ的にわかりやすいのでCCT曲線ではなく、S曲線を使って説明されることが多いようです。

CCT曲線の例CCT曲線の例

これは、CCT曲線の説明用の図ですが、(1)→(2)→(3)→(4)のように冷却速度が遅くなると硬さが低下します。

これは、(2)の冷却速度で、赤線の先端の(2)との接点がS曲線でのパーライトノーズに対応していると言えます。

CCT曲線は「連続冷却」で描いたものですので、やはり、一般の焼入れ(水冷や油冷など)とは異なりますので、この図の利用の仕方はいろいろな制約があります。

さらに、公表されている図表も少ないようです。

焼入れの際の冷却状況を想定すると、品物が大きければ、コーナーや端部は(1)(2)の冷却速度でマルテンサイト化しやすいのですが、中心部などになると(2)~(4)となって、マルテンサイトにはならないので、その他の組織が出現するために、中心部では硬さが出ていない状態になる・・・ということがこの図からイメージできます。

つまり、(ここでは明記されていませんが)(3)ではマルテンサイトではないトルースタイトなどの細かいパーライト組織、(4)では焼なましに近いパーライト組織になっているということがこの図から感じ取っていただくといいでしょう。



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