熱処理用語の解説

ハードニングという熱処理用語について    [h01]

Hardening は、直訳すると「硬くすること」ですが、熱処理では、「焼入れして硬化させること」をいいます。

鋼の硬化の程度は焼入れした硬さで評価します。

鋼の焼入れした時の最高硬さは鋼材成分中の炭素量が関係します。 実際に使われる鋼材は炭素以外の合金元素があって、イメージしにくいのですが、65HRCは、鋼の最高硬さで、切れ味の良い刃物などは58HRC程度以上の硬さが必要だとイメージしておくといいでしょう。

炭素量と焼入れ硬さ

炭素と鉄の合金「鋼(はがね)」を決められた高温の温度に加熱して急冷することを「焼入れ」といいますが、これによって、高温時にオーステナイト組織と言われる状態のものが、マルテンサイトと呼ばれる非常に硬い組織になります。

このグラフにみるように、炭素鋼では、マルテンサイトの硬さは炭素量が0.6%程度で飽和し、64HRC程度の硬さになりますが、鋼中の炭素量が少ないと最高硬さが制限されることがわかります。

しかし、炭素鋼では、品物が少し大きくなってくると冷却速度が低下して、このような硬さにならずに、充分に硬化しなくなります。

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図中に50%マルテンサイトと書いていますが、これは、成分の詳細などが不明なために、ここでは、マルテンサイト量が少なくなれば、硬さが低下することや、合金元素が添加されていると硬さ低下は少なくなる … というイメージでこの図を見る程度でいいと思います。

すなわち、マルテンサイト量が少なくなれば硬さは低下するので、硬さが低下しないように、冷却速度が少し低下しても十分に硬化させるために、マンガン(Mn)やクロム(Cr)などの焼入れ性を高める合金元素を加えるなどで鋼の成分を調整して目的の鋼材を得ます。

これらの合金元素を多く加えすぎると、焼入れ時に残留オーステナイトが増加するなどで、かえって硬くならないために、その添加量や炭素量を調整して、様々な鋼種が製造されています。

焼入れ性の低下は、冷却速度を早めることでも補うことができますが、品物各部の冷却程度の差が大きくなると、変形や割れなどが生じる恐れがでてくるために、目的や用途を考えて鋼種を選ぶ必要があります。

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用語の索引

あ行 あいうえお
か行 かきくけこ
さ行 さしすせそ
た行 たちつてと
な行 なにぬねの
は行 はひふへほ
ま行 まみむめも
や行 やゆよ
ら行 わ行 らりるれろわ



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