ロット(加工に供される品物の集まり)内に異種の材料が紛れ込むことを「異材混入」といいます。
熱処理前に材料が混ざり込む場合が多い
これは、熱処理工程だけではなく、鋼材の製造段階、流通段階、そして、納入された後の保管や加工の段階で発生します。
一度鋼種の違う材料が混ざってしまうと大きな問題に発展するので、常に注意しなければいけません。
熱処理時点で材料を混ぜてしまうと目的の品質にならないことで大きな問題に発展します。
これは、最も注意すべきことですが、熱処理会社では異材の対策はかなり厳重で、熱処理工場内で発生することは非常に少ないのが現状です。
しかし、すでに混ざりこんだロットが熱処理工程に持ち込まれると、その異常が熱処理前にわかるケースは非常に少ないのが実情です。
もしも、指定の鋼種以外のものや一部に違う鋼種が混じったまま熱処理してしまうと、ロットとして所定の品質が確保されないことになり、「熱処理における不具合」となりますが、熱処理会社の責任になるものではありません。
そのまま発見されないで工程が進むと大変なことになります。
ここでいう「異材」の意味は広範囲ですが、熱処理においては、熱処理工程での「予想しない成分の鋼種」をさします。
例をあげると、SKD11の熱処理部品の中に、普段使っている治具や他の部品を加工して使っている SS400やS45C などで加工された鋼材が混ざって持ち込まれる場合などで、意外なようですがよくあるケースです。
熱処理工程以前で鋼種が混ざってしまうケースがほとんど
熱処理の現場における不具合で最も多いのが、この異材混入による不具合で、熱処理過程で起こるよりも、ほとんどのケースは、品物を持ち込まれたお客様側に起因するものです。
つまり、お客様が持ち込まれた時点で別鋼種が混ざり込んでおり、それは熱処理前に発覚するケースは少なくて、熱処理中または熱処理検査でそれが発覚する場合がほとんどです。
そして、そのまま気づかずに工程が進んでしまう可能性はゼロではありません。
熱処理依頼の際は、ほとんど、注文書の材質、硬さ、熱処理の種類を確認するだけで熱処理作業に入りますので、加熱前に発見することはほとんどありません。
だから、熱処理をしたあとの仕上がりの色や仕上がり肌の感触などの目視で違いを見つけたり、硬さ検査の段階や出荷時の外観で「材料がおかしい」ということで異常が発覚します。
一旦熱処理で高温に加熱してしまうと、品物にならないことにもなって、大きな損失が発生するので注意しないといけないのですが、その対策は徹底した材料管理をすること以外に方法はありません。
間違って熱処理したものは、もとに戻せない
違った材料として熱処理した品物は、再熱処理をする場合もあります。
しかし、焼入れ温度が違う処理をしてしまった場合などは、同じ硬さに仕上がったとしても、じん性や寸法変化などで品質は劣化してしまっていますので、重要部品は1から作り直す必要があります。
この予防法としては、きっちりとした品物の分別管理を徹底することと、常に気を配っていること以外に方法はありません。
機械加工中の『気づき』が損失防止につながる
注意しておれば、熱処理時だけではなく、機械加工工程中でも、いろいろなサイン(兆候)に気づけば、防止できることもあります。
例えば、素材段階では、サビのツキ具合や鋼材の分別塗装の色で気づく場合も多いでしょうし、機械加工中では、熟練した加工者は、キリコ(削り屑)の色や形が異なっていたり、仕上がった肌の違いなどで気づく場合も多いのです。
人間の五感は非常に高度なもので、それを駆使して異常に気づく場合も多いですし、もしも何らかの感じで、事前に異材混入の可能性に気づけば、熱処理屋さんでは、ほとんど無料で、熱処理前の火花試験(検査)や蛍光X線分析で判別(分別)してもらえることも多いでしょうから、事前の相談することだけで大きな費用の損失が防げます。
「気づき」によって大切な品物が助かるケースが多いことを知っておきましょう。

