第一鋼業~SUS304の溶接時の問題点と対策

SUS304の溶接での問題

【質問】

ステンレス鋼で例えば、SUS304を溶接したときの ①溶接部分の応力除去の方法 ②溶接部の着色部を目立たないようにする方法・・・はどうすればいいのですか?

ステンレスの溶接部分 溶接部分の熱影響


【回答】

SUS304にかぎらず、ステンレス鋼を同じ成分の溶接棒を用いてアーク溶接などの溶接加工をする場合は、溶接部は変質しており、溶接前と同等の鋼材品質にはなっていません。

TIG溶接などの入熱量の少ない溶接でも、同様の変質や着色は生じます。

アーク溶接時には、1500℃以上の高温になって溶融している状態になり、溶接後は空冷されて常温まで冷却されます。

SUS304の市販品は溶体化処理されて耐食性が高い状態ですが、溶接によって耐食性が低下します。

これは、溶接によって成分の混ざり合い、結晶粒の増大、オーステナイト状態の破壊、熱による変形・・・などが生じます。

これらもあって、SUS304を溶接して、その溶接部分の性能を劣化させないようにするのは技術的にも難しいので基本的には溶接は適していない鋼種ですが、比較的安価で使いやすい汎用鋼ですので、いろんな用途で使用されています。

ただ、この鋼種は、準安定オーステナイト系ステンレス鋼と言われるように、安定したオーステナイト系に比べて、熱や変形を加えると、簡単に耐食性などの特徴が失われてしまいます。

そしてさらに、高温状態で空気に触れるために着色しますが、これは「酸化による着色」で、耐酸化性が低くなったために着色しています。

これらを避けるために、低温用途に用いられる品物などの重要部品では、オーステナイト安定性の高いSUS304L、SUS316L,SUS310Sなどの鋼種を用いるとともに、全体の大きさに対する溶接部分を制限するなどで、変形などの熱変化に対応する高度な溶接技術で溶接作業をすることを要求されます。

SUS304の溶接では、熱影響を抑える工夫と、溶接棒なども、より低炭素鋼合金のオーステナイト安定度の高いものを用いるなどの配慮が必要です。

SUS304の溶接品の完璧な応力除去や溶接対策はできませんが、①応力除去 ②着色 の問題について、一般的な方法や考え方、問題点などについて紹介します。

再溶体化処理

耐食性が破壊された場合は、もう一度「溶体化処理(固溶化処理)」をする方法が考えられます。

ただし、この溶体化処理は、SUS304では1050℃程度に品物を加熱した後に水冷します。

このために、形状にもよりますが、大きなものや薄い板上の品物は、この溶体化熱処理は無理な場合がほとんどでしょう。

薄い品物を窒素ガス冷却をつかって溶体化することも考えられますが、それでもやはり変形して品物にならない可能性が高いと言えます。

溶接部分の応力除去について

溶接部の応力除去は、本来ならば溶体化処理が必要ですが、しばしば、変態点以下で行う「低温焼なまし」が行われる場合もあります。

この場合には、応力の分散は温度が高いほど有利なので高めの温度にしたいのですが、ステンレス鋼の場合は、500℃以上に温度を上げると、組織変化によって「鋭敏化」という、耐食性や耐熱性が極端に低下する現象が出ますし、低温ではその効果が薄いので、応力除去の効果は限定的といえます。

実際のところ、どれほどの効果があるとも言えませんが、「やらないよりは・・・」という程度に考えておいたほうがいいでしょう。

応力が開放されるということは、応力が消えることと、応力が分散する場合があります。これによって品物が変形することもあって、低温焼なましの効果も不明確です。

溶接による残留応力は、接合点などの特定の部位に多く残留しているので、その、極端に高い部分の応力を緩和できたらいい・・・という考え方で、250℃~550℃程度に加熱して放冷する方法が行われますが、これを「ピーク応力の除去」と呼んでいます。

この加熱も、全体加熱が望ましいのですが、そうすると、全体の変形が大きくなる可能性や「着色の問題」もあるので、結局は、バーナーで部分的に加熱するケースが多いようですし、やらないよりは・・・ということで実施されていますが、幾度も書いていますが、効果の程はよくわかりません。



SUS304の溶接での着色の除去

この着色もしばしば問題になるのですが、大気中で温度を上げる作業では、着色は避けられないことです。

溶接部分の着色は、テンパーカラー(焼戻し色)と同様に、薄い酸化膜などの化合物層ですので、物理的除去か科学的な薬品処理が考えられます。

化学的な方法は、硝酸や弗酸で「酸洗い」する方法がありますし、専用の薬品も販売されています。

しかし、酸を使用しますので、白っぽい仕上がりになったり、ナシ地のように光沢のない肌になるなど、完全に溶接前の金属光沢にはなりませんので、 目立たないところで試してから用いるようにしましょう。

また、強酸の薬品を使いますので危険です。蒸気やガスを吸入したり、液を肌に触れないように注意するとともに、完了後には品物を中和しておく必要があります。

物理的な除去方法では、サンドペーパー、グラインダー類、ブラスト(サンド・ショット)、機械加工等で機械的に表面の着色部を除去します。

これらの方法も、溶接によって、部分的に組織が溶融していますので、その境界を完全にわからないようにするのは難しく、熟練がいりますので、簡単にはうまくいきませんが、逆に言えば、その程度の方法しかないということです。


↑このページの上へ

(来歴)R1.10 見直し R2.4 CSS変更


TITLE一覧

ステンレスSUS304の脱磁 ステンレスSUS440Cの焼入硬さ 超サブゼロについて教えて 熱処理の保持時間について 工具鋼の焼戻し回数 工具鋼のワイヤカット対策 SUS304の溶接での問題 ステンレス鋼の種類と特徴 熱処理の方法や考え方は変化しているか 機械構造用炭素鋼(SC材)の熱処理 機械構造用鋼の焼ならし 

HP紹介

鉄鋼の熱処理全般について紹介
せん断刃物技術の基礎事項を紹介
第一鋼業のHPとお問い合わせはこちらから