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均熱|均一に加熱することの重要性と難しさ

均熱(きんねつ)とは品物を一定温度に保って加熱することをいいます。

熱処理では「加熱中の品物全体が目的温度になる」となる必要性から、しばしば「均熱」という言葉が用いられています。

工業用の熱処理炉については、JISで「有効加熱帯の温度精度」が詳細に定められており、個々についてはJIS規格などの基準によるのですが、イメージ的には焼入れ用の加熱炉では目的温度に対して ±10℃、焼戻し用の炉では ±5℃ 程度以内であれば均熱されている状態と考えていいでしょう。

製鋼の造塊時においても、鋼塊内外の温度差があると品質ムラが出るので、鋼塊を再加熱して鋼塊の内外を同じ温度にすることを「均熱」と言い、それをする加熱炉は「均熱炉」といわれます。

【参考】均熱と温度精度の裏話

現実的な均熱の温度許容範囲はどの程度なのでしょう?

以下は少し本題から離れた内容で、熱処理での均熱についての余談を書いています。

上で書いたように、均熱とはどのような温度範囲内(温度差)をいうのかは微妙な問題です。

熱処理では、通常の加熱設備(炉)は測定系の精度と有効加熱帯の温度精度で加熱炉が管理されています。

例えば、焼入れ炉では目的温度に対して±10℃という温度精度で管理されています。

つまり、均熱というのは、「全く同じ温度」という意味ではなく、この程度の温度であればいいととらえています。

この場合の上下で20℃の温度差は「均熱」かどうかという疑問があるのですが、多くの加熱炉は、目的温度に対して上側か下側にふれるので、10℃程度の温度差はあるとみておけばいいでしょう。

もちろん、有効加熱帯の温度試験をすると、小さな領域では1~2℃程度の精度ですが、有効寸法いっぱいに品物を入れる場合は、この程度です。

普通は炉の一部に品物を入れるために、温度差はそれ以下の状態で加熱されているので、特に炉の温度分布(温度差)を気にすることはないと考えておいてもいいでしょう。

もちろん、取引間の問題を避けるために、JISでは、温度精度(温度分布の上下幅)については取引者間で協議する … としているのですが、協議しても、現実的には温度分布の実態を示すだけで、どうしようもできないものです。

ただ、焼戻し炉の場合は問題です。

工具鋼の高温焼戻し(一般的には500℃以上の焼戻し)では、5℃の温度差があれば、確実に各部の硬さの変化が現れます。

そのために、実施の熱処理作業では、①焼戻しごとに品物の配置を変えたり、②温度分布の違う炉を利用したり、③やや低温にして、時間をかけて焼戻しするなど、様々な対策をとって硬さムラを減らす工夫をしています。

だから、経験的には、焼入れ炉における均熱性(温度精度)は10℃程度でもほとんど問題にはなりません。

しかし、焼戻し炉の場合には、数立米を超える少し大きな炉になると±5℃を確保するのが精いっぱいです。

そして、すこし大きな品物で、500℃以上の高温焼戻しで硬さを決める工具鋼などでは、炉内温度差が5℃違うと硬さむらが生じてしまいます。

もちろんこれでは、要求される硬さ範囲(例えば、HRCで1以内の硬さの差)にする事は難しくなるのですが、それでも現実では「硬さ外れ」というのはほとんどありません。

これは、コストと納期がある状況下で、熟練した熱処理作業者はそんな精度のよくない焼戻し炉をうまく使って、勘を駆使して硬さの均一化をやっています。

その技術には感心するしかありません。

このように、熱処理の現場では、炉内の温度分布を把握したうえで温度の保持状態を管理する「熱処理技術」や「熟練者の技」による、神業としか言いようがないやり方でしのいでいるケースもまだまだ多いのです。