通常は、焼入れ冷却時に、0℃以下に冷やす処理をサブゼロ処理といいます。
サブゼロというのは、「0℃以下」という意味です。
これは、その他の言い方では、「深冷処理」と言われる場合もあります。
このサブゼロ処理は、鉄鋼では、焼入れ直後に行うことで、残留オーステナイトを低減して、硬さを上昇させることや、経年変化の減少などを目的に実施されます。
この処理を効率よく行うタイミングは、焼入れ冷却に引き続いて行います。
サブゼロを焼入れ直後に行わないで、いったん焼戻ししてから行うと、これらの効果は極端に減少します。
ただ、大きな品物などでサブゼロ処理を焼入れ直後に行えば、焼割れが発生する危険性が高いために、150℃以下程度の温度で焼戻しをしてからサブゼロ処理を行うこともありますが、サブゼロする効果の程度は低下します。
冷却する温度は、鋼のMf点(マルテンサイト変態が完了する温度)以下であればいいのですが、Mf点がわからない鋼種も多いので、一般的には、液化炭酸ガスやドライアイスの温度(-78℃程度)あるいは、電気冷蔵庫などで-80℃程度まで品物を冷却する処理が「サブゼロ処理」です。
例えば、冷間工具鋼のSKD11では、焼入れした状態では、硬さは64HRC以上で、Mf点は常温程度とみられますが、焼入れした状態では、20%以上の残留オーステナイトが組織中に残っている状態です。
それを、焼入れ直後に液化炭酸ガスで冷やすと、硬さが0.5~1HRC程度上昇します。
ただ、このサブゼロ処理をしても、残留オーステナイトは0%にはならず、3~5%程度は残っていることが多いようです。
サブゼロ処理で「残留オーステナイトを消失させる」と説明される場合が多いですが、このように、実際的には、「残留オーステナイトを低減させる処理」と考えておくのがいいでしょう。
また、ここでは詳しい説明はしませんが、サブゼロ処理をするとショックアブソーバーの役目をしていた残留オーステナイトが低下するので、シャルピー衝撃値が低下します。
また、硬さの上昇もあり、焼戻ししたときの温度と硬さに関係が変化します。(これがいいのか悪いのかは使う目的によります)
クライオ処理
-100℃以下で行う処理を、クライオ処理と液化炭酸ガスによるサブゼロ処理と区別して呼ばれることも多いようです。
通常は液化窒素を使って-180℃程度にするものが多いです。
このクライオ処理をすることで、耐摩耗性や寿命の向上を謳うものもあります。
しかし、これらの効果については、今のところ、詳しいことはよくわかっていないのが実情で、通常のサブゼロと同じように焼入れ後に行う場合や、焼戻し後(あるいは最終仕上げ加工の前)に行っても効果があるなど、実施する時点や方法の様々で、定説もない状態です。
また、仕上がった製品に深冷処理を行うと、-75℃のサブゼロ処理では見られない「寿命が改善する」効果がある … などとPRされていることがありますが、その状況や理由なども詳しくはわかっていないというのが実情です。

クライオ装置の例(写真協力:第一鋼業(株)さん)
クライオ処理の多くは、液体窒素ガスが用いられます。
熱処理以外の分野では液化アルゴンガスなどを用いた処理も行われますが、熱処理ではアルゴンガスは処理費用が高価になるために、液化窒素による冷却以外はほとんど行われていません。

