A1変態点(炭素鋼で約730℃程度)以下で加熱する焼なましを総称して「低温焼きなまし」といいます。
処理の目的は、鋼の軟化には「軟化焼なまし」が、応力除去には「応力除去焼なまし」 を行います。
一般的な低温焼なましの目的は、軟化、応力除去、均質化などのために行なわれます。
応力除去焼なましでは、しばしば、焼入れ焼戻し品を処理する場合もあるので、この場合は、焼戻し温度などを勘案して、焼戻し温度以下で応力除去焼なましをします。

これはWEBから引用したもので、平衡状態図に焼なまし温度範囲を書き入れた図です。
図のP-Kは「A1変態点」と呼ばれる温度で、加熱温度がその上か下かで、冷却する要件も違いますし、鋼の組織の状態も違ったものになります。
変態点を超えた完全焼なましなどでは、変態の際に結晶粒が変化をして小さくなります。 これに対して、変態点以下の加熱では、温度とともに結晶粒が大きくなるので、軟化させたあとでもう一度焼入れをする場合は、完全焼なましと比較すると、機械的性質が劣る要素になります。
A1点以下の温度で行うものが低温焼きなましです
通常、加熱温度が高いほど軟化や応力除去の効果が高く、温度を保持したあとは空冷(放冷)します。(空冷しても硬くなりません)
それに対して、軟化と結晶粒の調整が目的の「完全焼なまし」は、PKの温度がA1変態点(変態温度)以上の温度で行います。
そのために、成分によってオーステナイト化温度が変わるので、図のように、加熱温度も少し変わりますし、変態によって結晶状態が変わるので、変態点を超える焼なましでは、加熱後は徐冷(通常は炉冷)しないと硬さが十分に低下しません。
もちろん、その温度以下の「低温焼なまし」でも、曲がりを発生を抑えるために、ゆっくり冷やせばいいのですが、加熱による組織変態をしていないので、作業を短縮するために、通常は空気中に放冷する作業をします。
A1変態点以下の温度での焼なましの「低温焼なまし」ですが、A1変態点に近づくように、温度が高いほど軟化しますので、硬さを勘案しながら焼なまし温度を決めて応力除去や軟化をすることもできます。
もちろん、できるだけ高い温度のほうが軟化の効果が大きいのはいうまでもありません。
硬さを下げたくない焼入れ焼戻し品の応力除去は焼戻し温度以下で行う
また、調質品などを曲がり矯正をしたときの応力除去処理などでは、焼戻し温度以上にすると、硬さ低下などが起きるので、焼戻し温度以下での低温焼なましが行われます。
このように、目的によって低温焼なまし温度を変えるので、目的をはっきり示して処理条件を決めることが大切です。
オーステナイト系のステンレス鋼などの低温焼なましでは、400℃以上の温度になると「鋭敏化」といって耐食性が下がる鋼種が多いので、(これはここには書かれていませんが)注意が必要です。
また、溶接品などでは、(応力除去効果は小さいのですが)ピーク応力の除去のための300℃以下での応力除去処理なども行われます。
ピーク応力の除去とは、応力除去の効果は薄いのですが、極端に大きな応力部分を緩和するというための簡易的な応力除去熱処理です。

