熱処理では、温度を上昇または下降したときに結晶構造が変化する現象(相変化)を「変態(へんたい)」といいます。
これには、オーステナイト変態やマルテンサイト変態などがあります。
変態が発生する熱処理での温度を、変態点・変態温度といいます。

これは、鉄-炭素系の平衡状態図の一部ですが、鉄鋼の場合は図のようにA0~A4まで5つの「変態点」が示されています。
鋼の温度を変化させた時に変態点で結晶構造や磁気的な性質などが大きく変わります。 これが「変態」で、変態が起こる温度が「変態点/変態温度」です。
このうち、A0はパーライトの磁気変態点、そして、A2はフェライトの磁気変態点(キューリー点)で、A4はオーステナイトがほかの状態(δ鉄)になる高温状態の変態点ですが、通常の熱処理ではA1・A3 が重要で、この2つが取り上げられることが多いようです。
熱処理では、A1温度における変化が基本になります
このA1と、図のSとフェライトのA3点を結んだ「A3線」、SとEを結んだ線が「Acm線」です。
これらが熱処理ではよく顔を出します。
つまり、鋼を加熱したときに、オーステナイトになるかならないか(オーステナイト化をするかしないか)ということが重要です。
熱処理温度を考える時には、鋼材の炭素量に応じた図中のオレンジ色の温度が熱処理では焼入れ温度を決める場合に重要になります。()
ここにある「S点」は共析鋼の共析点(図では0.77%Cと書いてあるところ)で、この点とA3線、Acm線を基準にして熱処理温度が決まります。
つまり、炭素鋼であれば、薄オレンジで示した温度が焼入れ温度の目安になります。 この図では、炭素以外の合金元素は表示されていませんから、オレンジ線は、焼入れ温度のイメージでみておいてください。
オーステナイト化
鋼の熱処理は、温度を上げて、品物をオーステナイト状態にして、その温度から冷却速度を加減していろいろな性質の鋼にすることですから、この、オーステナイト状態にすることが重要で、焼入れ温度に温度を上げることを「オーステナイト化する」と言います。
このように、一般熱処理の「焼入れ」「焼なまし」「焼ならし」などの加熱温度を考える場合には、炭素含有量に応じた、このA1線、A3線、Acm線を基準で考えます。
(注)この図は、平衡状態図で熱処理温度の考え方だけを示したものです。 実際の熱処理温度は、炭素以外の成分が関係してくるために、JISやカタログなどに示す温度に加熱するのが基本ですので注意ください。

