PR

一般熱処理における 雰囲気熱処理と真空熱処理

ここでいう雰囲気は、主に、加熱炉中の雰囲気のことです。

雰囲気熱処理は、鋼の表面状態を調節するために、浸炭雰囲気にしたり、酸化防止のために窒素ガスを流入させて脱気するなどの機能を持つ加熱炉を用いた熱処理をいいます。

また、真空熱処理は本来は真空中で熱処理をすることですが、一般熱処理では、加熱中に鋼の表面が酸化しない程度に大気を除去して加熱するタイプが主流です。

さらに、熱効率をよくするために、微量の窒素ガスを流入するものなどによる熱処理も真空熱処理に含まれます。

大気中で加熱する熱処理は、「大気熱処理」といい、雰囲気熱処理と区別する場合があります。

大気熱処理と雰囲気熱処理では、まず、経費の面で熱処理費用の差があります。

ただ、大気中で加熱すれば、酸化に伴う表面の劣化(変色や脱炭などの組織変化)が起きます。

そこで、それを防いで金属光沢のある光輝状態を保つことで品位を高めたり、雰囲気を利用して鋼の表面の状態を変えることなどを目的として雰囲気熱処理を行うのですが、精密金型などの高級鋼に対しては一般的になっています。

ただ、50HRC程度以下の鍛造用金型などでは、全面の機械加工が比較的やりやすいので、費用の安い大気熱処理が行われています。

品質の優位性についてはケースバイケースです。

雰囲気熱処理であっても、加熱炉が自動化で、冷却までの搬送に時間がかかったり、焼入れ冷却速度が十分でないなどで、設備と品物が適応していない場合があったり、また、熱処理する鋼種と設定された雰囲気状態が適していない … などの問題もあります。

雰囲気は多様

用いられるガスは、窒素・アルゴンガスなどの不活性ガス、水素の還元性ガス、その他の酸化性、浸炭性、窒化性などで、目的に合った雰囲気ガスが雰囲気の調整に用いられます。

同様に、真空状態も雰囲気の一つです。

一般熱処理では、鋼の酸化を防いで光輝性を保つために、炉内を脱気した状態で加熱をする下の写真のような「真空炉」が主流になってきており、通常の大気熱処理よりも高級な熱処理と位置付けられています。

真空炉の例 写真:第一鋼業(株)

一般熱処理では高温で加熱中に品物の酸化が生じると、鋼中の炭素が奪われる「脱炭」も同時に生じることが多く、そのために、大気雰囲気で焼入れすると、表面硬さが十分に出なかったり、焼割れの原因になる場合があります。

そこで、窒素ガスなどで大気を置換して酸素を駆逐したり、脱気して真空状態に近づけることで、酸素濃度が非常に低い状態で加熱する熱処理が行われるのですが、これらの真空炉も「無酸化熱処理」に分類されることが多いです。

この無酸化熱処理には、ソルトバスによる熱処理も含まれます。

塩浴に品物を入れると、ソルトによって鋼の表面が空気から遮断されて酸化や脱炭を防ぐことができます。

雰囲気炉を過信しない

ただ、よく勘違いされていることは、熱処理をすると、全く熱処理前の外観が維持されることはありません。

いずれの雰囲気熱処理でも無酸化熱処理でも、熱処理前と同様の肌で仕上がることはないことを知っておかないといけません。

あくまでも、大気加熱ほどの表面の変質は起きないというものです。

真空炉や雰囲気炉は工具鋼の熱処理の主流

熱処理用の真空炉の多くは、脱気した状態で加熱し、焼入れ時の急速な冷却に窒素ガスを用いて酸化や脱炭を防ぐのです。

上にも書いたように、完全な高真空状態で加熱するのではなく、加熱中に少量の窒素ガスを炉内に流すなどで、対流による加熱促進や均熱性向上を図るなど、仕上がりの外観や経済性などを勘案したものになるように変遷してきています。

焼入れのための冷却は、大量の窒素ガスを噴射するものが多いのですが、冷却を速めるために、油冷装置や塩浴を用いたものもあります。

これらも同様に、完全真空状態で加熱するのではなく、減圧されて酸素を除去するための加熱方法が多く、これらのいずれも、脱酸素のために脱気しているものは、通常は、雰囲気炉とは言わないで、「真空炉」とよばれています。