歪み(曲がり)除去のために、荷重をかけながら加熱する処理をいいます。
ひずみ取り焼鈍(ひずみとりしょうどん)とも呼ばれるものですが、(後で説明しますが)これは、応力除去焼なましのことではないので注意ください。
この方法は、焼入れ品(または調質品)では、焼戻しを兼ねるか、焼戻し温度以下で外力を付加して(たとえば、治具を用いて変形を矯正しながら)行うのが通例です。
矯正時の応力を緩和するために行う低温焼なましの「応力除去焼なまし」と、ここでいう「ひずみ取り焼なまし」は混同されやすいのですが、別のものです。
この「ひずみ取り焼なまし」は、本来、ひずみを取るための焼なまし操作なので、ひずみ取り作業が主体です。
この「焼なまし」という言葉には「やわらかくする」という意味合いが強いので、ひずみを取るために温度を上げて、矯正中の「割れ」などが起きにくい状態にしてひずみ取りをすることですから、ある意味で、加工熱処理の一つと言ってもいいかもしれません。
これらの用語が紛らわしいので、私が勤めた第一鋼業では、この「ひずみ取り焼なまし」を、プレステンパー(治具で締め付けて焼戻しすること)と呼んで区別するようにしていました。
このように、治具に品物をセットして焼戻しを兼ねてひずみ取りをする方法も「ひずみ取り焼なまし」であり、焼戻し時の組織変化の助けを借りてひずみをとる方法です。
これは、1回目の焼戻し時に有効で、かつ、できるだけ高い温度を採用するのが効果的です。
もちろん、品物の硬さに制限があるので、焼戻しする温度を超えた温度に上げることができませんが、この最初の焼戻し時に行うというタイミングを外すと、うまく矯正ができません。
1回目の焼戻し時のタイミングを逃さないようにします。
JIS用語にはない「ひずみ取り焼戻し」
JIS用語の「応力除去焼なまし」と言われる熱処理(私が勤めた第一鋼業では、これを「歪取り焼戻し」と言っています)とは、冷間でのひずみ取り品などを後工程で機械加工すると、機械加工中に「振れ」などが出る場合があるので、加工前に温度を上げて内部応力を解放させる熱処理を行うものを言います。
この作業は、品物の硬さが低下しないように、焼戻し温度以下で行うのですが、温度は高いほど応力が解放されるので、この熱処理をすると、ひずみ(曲がり)が増加する場合があります。
しかし、応力が解放された結果で曲がりが出るのですから、それを目的に熱処理をしているのです。
このような熱処理は余分なことようですが、焼入れした精密機械部品などでの経年的な変形を防ぐための「隠れたマル秘処理」といえます。
以上の説明のように、「歪取り焼なまし」「歪取り焼戻し」「応力除去焼なまし」などは混同しやすい用語で、しばしば用語の説明においても、混乱している記述があるのですが、用語の意味や解釈はともかく、熱処理を依頼する場合には、「何をしたいのか」という、熱処理の目的をはっきりさせて事前に熱処理業者などと相談するとよいでしょう。

