工具鋼のカタログなどで使われていることが多い摩耗試験用の「大越式迅速摩耗試験機」を紹介します。
この試験機は、荷重、摩擦速度などの条件を簡単に変えて試験が行えることや、試験時間が短いことが特徴で、工具鋼の耐摩耗性評価で用いられることが多くなっている試験機です。

試験方法は、回転する円盤を試験片の板に押し当てて、試験片のくぼみの大きさから摩耗減量を算出して、比摩耗量を測定します。
摩擦速度(円盤周速)や荷重、摩擦距離などを簡単に変えることができることと、数分間で試験が完了するので、焼入れした工具鋼の摩耗特性を比較的簡単に調べることができます。
・・・とはいうものの、実際に試験をしてみると、顕微鏡で拡大して摩耗減量の測定をするために、測定の仕方で摩耗量が大きく変わるなどもあって、熟練がいります。
たとえば、同条件で試験をしても、毎回、結果が大きくばらつくことが多いなどで、その摩耗量評価も簡単ではありません。
しかし、その他の摩耗試験のどれをとっても、それぞれに長短所があるので、どの試験方法がいいのかが決めにくいものです。
プロテリアル(旧:日立金属)さんは古くから、凝着摩耗はこの試験機で、また、土砂摩耗については西原式摩耗試験でのデータをおおく公表していたこともあって、近年は、多くの工具鋼メーカーさんのカタログなどにも、これを使った試験値がたくさん見受けられるようです。
しかし、注意する点は、各社が同じ条件で試験をしているということはありませんから、単純に他社の試験数値だけを比較することはできません。
同じ工具鋼メーカーの試験値であれば、各社が基準作って試験しているので問題ありませんが、他社のデータの数値を比較するのはダメです。
たとえそれらの条件を揃えて試験をしても、環境や試験機が異なると、数値が変わるほど微妙な試験ですから、鋼種を比較しようとすると、少なくとも、同じ試験機で同時に比較試験をしなくてはなりません。
そして、試験条件を決めることも大変で、こればかりは、たくさんの試験を経験しないと決めにくいかもしれません。
私は、大阪府産業技術研究所さんの試験機をお借りして、自社で熱処理した鋼材などの比較試験をしていました。
通常用いる試験片サイズは5tx20x50程度で、回転円盤はφ30x3w程度のS33Cの焼ならし材などを使用して、1.5m/s以下の比較的低速の摩擦速度で、無潤滑状態での耐摩耗性を比較していました。
これは、プロテリアル(旧:日立金属)さんの材料を多く使用していたので、そのやり方に沿って試験をしていたのですが、もちろん、プロテリアル(旧:日立金属)さんの試験値とは一致しませんから、独自の試験における評価をすることになります。
特に、鋼種比較をする場合は、摩擦速度が遅いと摩耗量の差が出ませんし、摩擦速度が増すにつれて、熱の影響が強くなるので、適当な条件選びも大変です。
しかし、この試験機では、試験条件の変更が簡単ですし、1つの試験片で多数の条件の試験を短時間にできるという便利な試験機です。
でも、得られた数字から的確な評価をするのは難しいのですが、実情では、この試験機のように迅速な試験ができる試験機がないので、それで、多くの材料メーカーさんも使っているのかもしれません。

