PR

マトリックス|熱処理では組織の素地のこと

英語では matrix で、熱処理では、マトリックス(マトリクス)や 「素地」 といいます。

たとえば冷間工具鋼などの顕微鏡組織で、共晶炭化物を含む鋼種の場合は、その炭化物部分とそれを除く部分では成分も特性も全く異なっています。

そこで、熱処理の焼入れ温度では鋼材に溶け込まない共晶炭化物や非金属介在物などを除いた部分をマトリックス(素地)と呼びます。

構造用鋼などでは、例えば焼入れ温度に加熱する場合は、鋼の成分のすべてがオーステナイト状態になっているので、この表現は使われません。

例えば、SKD11などの共晶炭化物が組織中に残っている鋼種では、「マトリックス中に分散したクロム系の炭化物が … 」などのような表現が用いられます。

実際の話題の例

以下は少し専門的な内容です。わかりにくいようなら斜め読みでいいでしょう。

鋼材の特性を検討する場合に、(例えば、炭化物を有する工具鋼などのじん性や耐摩耗性の検討では) 炭化物と素地部分を分けて成分構成を考える場合がしばしばあります。

鋼材の化学成分は、レードル分析値を用いられるのが基本です。

これは、製鋼時に、鋳型に鋳込む前の溶湯から採取した鋼の成分で示されます。

厳密に言えば、溶湯を鋳型などに鋳込んだ後に凝固してインゴットになったときには、インゴットの中心部と表層部など、各部で成分が異なっています。

それがその後の圧延や鍛造によって、かなり均質化されて市販される鋼材になりますが、その後の熱処理(焼入れの加熱)をするときに、共晶炭化物(熱処理温度では鋼中に溶け込まない炭化物)などを構成する元素は熱処理前後の硬さは変わりませんが、その分布や量で、通常の硬さ試験機(例えば、ロックウェル硬さ試験機など)で測定すると、硬さは炭化物の影響を受けます。

このように、鋼材全体の成分だけでなく、共晶炭化物を除いた部分について焼入れ状態などを考える必要があるのですが、そのために、それを「マトリックス」という言い方で鋼材の機械的性質などが検討されます。

現在では、微小部分の成分などの分析が比較的簡単にできるようになり、それが特徴ある鋼種を生み出す結果になっています。

近年、マトリクスハイス(セミハイスとも称されます)という、高じん性タイプの高速度工具鋼が各種製造されて販売されていますが、これらは、マトリックスの強さを高める成分構成を検討して生まれてきたものです。

これらの鋼種は共晶炭化物の量や形状などを考慮して、素地の強度やじん性を高めるように設計されたもので、たとえば、ダイス鋼のような成分にモリブデンやコバルトなどをたくさん加えた成分のものなど、高速度鋼に類する高合金成分の鋼種にして、58HRC以上でのじん性や耐熱強度をもった鋼種になっています。