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固溶体|2つ以上の元素が固体の状態で溶けこんでいるもの

2種以上の元素による固体状態での結晶質を固溶体といいます。

鋼の場合で言えば、非常に高温では液体(溶体)の状態で、それを鋳型などに鋳込むと固体の状態になります。

この状態は、Fe(鉄)に炭素やその他の元素が素地(マトリックス:matrix)に溶け込んでいます。 これを「固溶体」といいます。

焼入れや焼戻しなどの熱処理は固溶体が対象です

一般の熱処理は、加熱している状態でも固体ですので、この状態が固溶体で、固溶体の状態で温度変化を与えて、結晶構造の変化を利用して「焼入れ」などの熱処理が行われているということになります。

元素の構成によって、置換型固溶体と侵入型固溶体があり、それが混ざっている場合もあります。

通常の焼入れ焼戻しなどの熱処理は固体の状態での操作をして、結晶の構造や配列を変化させています。

固溶体のイメージ

2つの元素が固溶する場合は、このような2種類の固溶体が考えられられます。 左が置換型、右が侵入型です。(あくまでイメージです)

通常の鋼は多種の元素を含むために、このような単純なものではなく、この図はイメージ図です。

鋼の熱処理において、加熱冷却に伴って、結晶構造が体心立方・面心立方・体心正方などと変化します。

その時の元素の状態は入り組んでいますし、各所で均一ではなく、部分部分で様子が違っています。

このために、鋼の機械的性質の微妙な変化があります。

イメージ図でそれをみていきましょう

例えば、SKD11(1.5%C-12%Cr-1%Mo鋼)のような合金元素の多い高炭素の鋼の場合で考えてみましょう。

SKD11での固溶体のイメージ

1. 溶融状態

高温ですべての元素が溶け込んでいる「融体(液体・溶体)」スープの①の状態から温度を下げていく様子を考えてみましょう。

2. 共晶炭化物の析出

まず、②のように、炭化物(共晶炭化物)が析出します。 このような炭化物は、焼入れ温度に加熱しても(オーステナイト中に)溶け込みません。

この熱処理温度で素地中に溶け込まない炭化物を「共晶炭化物」といいます。

それが固溶体の中に混在して、残りの組成が固溶体の状態となっています。この状態は、液体や半液体ではなくて、硬さは高くないのですが固体です。(ここまで②の状態)

3. 凝固完了

②の状態から、普通は徐冷して鋼塊全体を凝固させます。(③の状態)

次に、この図にはありませんが、通常の工程では、均質化するためのソーキングや鍛造が行われます。

これは、1150℃程度までの温度に再加熱して、さらに、鍛造などの熱間加工で均質な鋼材にしながら常温まで冷やし、再度、完全焼なまし処理をして製品(機械加工用の素材)として出荷されます。

4. 熱処理(焼入れ焼戻し)

ここからは④の熱処理段階になります。

熱処理での加熱状態は、共析炭化物以外の元素はオーステナイトという状態の組織の中にすべての元素が溶け込んだ状態にします。 この温度では、共晶炭化物は素地に溶け込まずに、そのままの状態です。

そこから焼入れ硬化させます。

その状態は、オーステナイトであった部分は、マルテンサイトという硬い組織やベーナイトなどの組織や未変態のオーステナイトなどが複雑に混ざった組織になっています。

これも固溶体の状態です。

それを焼戻しするのですが、焼戻しの温度によって上の組織状態は徐々に変化します。

この図はありません。そして、これも固溶体内で 焼戻しマルテンサイト~微細なパーライトなどpの組織変化と、それに伴う硬さ変化があります。

5. 高温焼戻し時の2次硬化

次に ⑤の状態です。ここでは、高温焼戻しで500℃以上の温度で焼戻しした際に、2次炭化物が析出する状態が示されています。

SKD11の場合で説明

SKD11では、約400℃を超えるあたりから、新たに炭化物が析出して硬さが上昇します。 そこで析出した炭化物を「共析炭化物」と呼びます。

すなわち、それらの共析炭化物は固溶体の中から必要な炭化物成分を抽出して、残りの固溶体の元素量などが変化していることになります。

熱処理で加熱したときのオーステナイト状態とは、鋼の温度を変態点以上にあげて、面心立方晶に変態した状態(焼入れ温度になっている状態)の状態を言います。

この状態では、高温で鋼は柔らかくなっていますが、やはり固溶体(固体)の状態です。

低炭素鋼でも同様です

オーステナイトの状態にある高温の鋼(この場合は、簡単なように、たとえば、S45Cなどの特別な元素を含まない 小さなφ10mm程度の鋼(0.45%C)を考えるといいのですが)を、 水冷などで非常に早く冷却をすると、 「マルテンサイト」という組織が出現して硬化します。

しかし、その冷却の速さを変えて、少し遅い冷却(例えば、油冷や空冷)をすると、フェライト、マルテンサイトなどの単相と、フェライト部分以外のマルテンサイトであるべきところが、それ以外の、トルースタイト、 ソルバイト、 パーライトなどと呼ばれる層状になった混合組織になります。

このような、熱処理として説明される状態の変化は、すべて、固体状態における固溶体の変化です。

長ったらしく複雑そうな話の説明ですが、鋼のように多成分が混合しているものが、個体のような状態になっているのを「固体」と言わないで「固溶体」と言う … というだけのことです。

固溶体の中でいろいろな変化をしている状態をイメージしていただきたかったので、長い話になりました。

ステンレスの溶体化処理

オーステナイト系ステンレスの熱処理に「溶体化処理」というものがありますが、これは固溶体処理(または固溶体化処理)と呼ばれます。

これも、難しく考えないで、安定したオーステナイト状態を保つための熱処理 … と考えておけば納得しやすいと思います。