高周波熱処理とは、高周波誘導加熱による熱処理の総称です。
これは、表面熱処理に分類される熱処理です。
高周波熱処理には、高周波焼入れ、高周波焼戻し、高周波焼なましなどがあり、その中でも、焼入れ処理が最も多く行われています。
そのために、「高周波焼入れ」という言い方が一般的です。
高周波電流を流して加熱します
熱処理したい鋼製の品物の表面に誘導コイルを近づけておいて、そのコイルに高周波電流を流すと、品物の表面が急速加熱されます。
それを利用する方法が高周波熱処理です。
つまり、品物の全体が加熱されるのではなく、鋼の表面だけが加熱されます。
そして、焼入れ装置には冷却液を使って急冷する装置も持つものが一般的です。
高周波電流による急速な加熱と、冷却液を噴射する急速な冷却なので、高炭素鋼や高合金鋼よりも、むしろ、機械構造用鋼などの低合金鋼の焼入れに向いています。
誘導加熱を利用するため、非磁性の鋼(例えば、オーステナイト系ステンレスなど)には利用できませんし、ダイス鋼などの高合金鋼では一般熱処理の条件と異なるので、思ったような特性が得られません。
使用する周波数や出力に合った品物を選ぶ必要があります
高周波の周波数や硬化(加熱)深度によって、高周波、中周波、低周波などと分類され称される場合もあります。 しかしその分類や区分ははっきりしていません。
一般的には、使用周波数が低くなると、硬化層が深くなります。
すなわち、中宗派や低周波は、「高周波焼入れの中で、硬化深さが深くなるような周波数になっている」という程度の意味合いと思っているのがいいでしょう。
また、品物の加熱能力もあるので、品物が目的の熱処理ができるかどうかなどは、事前に打ち合わせをして確認するのが無難です。
高周波発生装置
高周波を発振させる装置は、電動発電機(MG:0.5~10kHz・400kw)、真空管(0.02~1000kHz・1500kw)、サイリスタインバータ(0.2~10kH・4000kw)、トランジスタ式(各種あり0.05~1000kHz・~1200kw)などがあります。
硬化する深さは周波数で変わります
周波数が低く、出力が大きいほど加熱する深度が深くなります。
概ねの硬化層は1mm~10mm程度です。
たとえば、50kHz300kw程度のもので加熱した場合は3mm程度の硬化層が得られますが、これも、鋼種、形状、熱処理方法などで変わってきます。
急速短時間加熱が特徴です
比較的低炭素の低合金鋼の焼入れで威力を発揮する熱処理法です。
だから、十分に合金成分を素地に溶け込ませる必要のある高合金鋼などは、たとえ炭素量が十分であっても、見込まれる焼入れ硬さが得られない場合も多いので注意しましょう。
高周波電流を流すコイルを、焼入れしたい鋼材に近づけると、表面部が急速に加熱され、引き続いて連続的に冷却液をかけて焼入れ硬化します。
品物の内部(中心部・奥部)はそんなに高い温度にならないので硬化しません。
これによって、高周波焼入れをすることで、焼入れ後の表面が硬化するとともに、圧縮応力が加わって、硬さ、耐摩耗性、高い疲労強度などが生まれます。
そして、内部は硬化しないので、全体ではネバくて強いという特徴があります。
この特徴を生かして、軸などの機械部品や自動車部品などに利用されるなど、用途は広範囲に及びます。
高周波による「一発焼入れ」と「移動焼入れ」について
焼入れの方法は大きく分けて、歯車の外周部全体を加熱して一気に焼き入れる方法などを「一発焼入れ」といいます。
一方、リング状コイルで丸棒の外周や平面部分を移動しながら焼き入れる方法を「移動焼入れ」といいます。
いずれも、それぞれの品物の焼入れ部位にあった「コイル」が必要になります。
適当なコイルがある場合には、高周波焼入れは、量産品には作業効率がいい熱処理法です。
しかし、新規品などでは、形状に合った適当なコイルがない場合は、その製作費などがかさむので、コイルの費用負担が問題になることもあります。
それもあって、初回品や単発品では、事前に熱処理内容や価格についての打ち合わせと見積もりを依頼するのがいいでしょう。
熱処理技術も重要です
非常に速い加熱が行われるので、逆に、加熱温度を調節しながら加熱する必要があります。
そのために、通電時間や送り速度などの調整次第で、硬さむらなどの熱処理異常が生じやすい面があるので、技術ノウハウも重要になります。
そして、仕上げ後の表面硬さを確保したい場合は、硬化深さなどについて事前に打ち合わせするとよいでしょう。
この表面硬さや硬化深さは、熱処理操作でも変わりますが、基本的には、周波数によるものが大きいです。
近年は、その調整も簡単になっているので、いろいろな条件に対応できるようになっています。
冷却は機械構造用鋼に合わしている
主に、機械構造用鋼に合わせた焼入れ冷却剤(水溶性の焼入れ剤)を使用している装置が多いですから、装置に適合しない鋼種もあります。
これについては、事前に打ち合わせするとよいでしょう。
焼なましや焼戻しでの高周波加熱もありますが
これは、温度監視と温度コントロールを自動化することによって実施されています。
しかし、ほとんどで行われているのは高周波焼入れがメインです。
さらに、高周波焼入れ後の焼戻しは、品物全体を加熱炉に入れて焼戻しすることが広く行われています。
このために、焼入れ後の焼戻しの多くは200℃までの低温焼戻しが多く、電気炉などを用いて、品物の全体を加熱して焼戻しされます。

