Aging(エイジング)とは「時効」 のことです。
ここでいう「時効」とは、鉄鋼材料特性が時間的に変化することをいいます。
また、その変化を熱処理により作為的に行う場合は「時効処理」と言います。
鋼を熱処理(焼入焼戻し)して長時間が経過すると、変形や硬さの変化が見られることがあります。これを時効変化(経年変化)といいます。
焼戻し時の硬さは温度と時間によって変化します。
これは、温度と時間によって時効が進行していると考えることもできます。
焼戻しをして硬さが変化すれば、組織変化が同時に進行して起こっていますので、焼入焼戻しした鋼でも、長い時間が経過すると、硬さや体積変化も進行しています。
つまり、そのために生じた応力で、品物が変形したり、割れたりすることもあります。
焼入焼戻しされた鋼は、大なり小なり時間とともに変化しますし、環境温度にも影響を受けます。
また、焼入れ時に生成した硬い「マルテンサイト」や焼入れ硬化しない「残留オーステナイト」は比較的不安定なもので、これらも、時間とともに変化したり分解していきます。
このときにも硬さや体積変化が生じます。
高合金鋼などで2次硬化(500℃付近の焼戻しで硬さが上昇すること)がみられる鋼種についての高温での焼戻しは、あらかじめ温度を加えて時効を進行させる処理が行われているといってもいいでしょう。
また、析出硬化型のステンレス鋼の「H処理(析出硬化処理)」も人為的な時効処理と考えていいでしょう。
この析出硬化型のステンレス鋼は、例えば、SUS630では、1050℃程度から水冷することによって軟化させてから(これを固溶化処理・S処理といいます)、それを機械加工などで成形した後に、470~630℃程度に加熱して硬化させます。(これを析出硬化処理・H処理といいます)
過去の例ですが、析出硬化型のステンレス鋼をH900処理した、長さ100mmの精密部品があって、それが、3年ほど経過したときに寸法が0.01mm近く伸びていて問題になったことがあります。
このように、品物の寸法形状が大きくなると、その時効による変化量も大きくなるので注意が必要です。
この時効変形量を、焼戻しパラメータを使って計算してみたところ、少し高い室温で使用する品物では、3~5年後には硬さが変化することが計算の結果でわかったのですが、これは、組織変化や寸法変化が起こっているのです。
熱処理した部品であれば、時効はごくゆっくりではあるものの、確実に進行するということです。
つまり、室温でも熱処理で組織や硬さを調整した鋼は、長時間が経過すると寸法変化することは避けられないと言ってもいいでしょう。
SKD11は通常の焼入れでも20~40%の残留オーステナイトがあります。
これが経年変化する可能性が高いので、残留オーステナイトが多い鋼種は、精密部品などに使う場合は注意しないといけません。
精密機械のフレームなどに使用される鋳物製品では、長期間雨天にさらす「枯らし」という作業が行われていますが、これも人為的に行われる時効変形対策です。
しかし、それでも完璧ではありません。
鋳造品は凝固時の内部応力が高いので、このような時効処理は重要です。
鋼の熱処理品についても、高い内部応力があるので、時効による影響を受けて変形や変寸が徐々に生じる … ということを知っておくことは大切です。

