これは焼入れの用語で、焼入れ冷却途中に水や油から引き揚げて、焼割れ・変形防止や硬さ調整などを行う方法を 中断焼入れ といいます。
時間焼入れ、2段焼入れ、段階焼入れ などという言い方も同様のものです。
ただ、実際の熱処理では、このような方法は、特に指定されなくても常時行われているものです。
通常の熱処理では、一気に常温まで冷却しない
通常の書籍に書かれている熱処理は、小さな試験片が用いられているので、このように冷却途中に冷却を中断する必要もありません。
つまり、油焼入れや水焼入れでは、焼入れ温度から冷却液中に品物を入れて、冷却液の温度になるまで冷却します。
しかし、現場の熱処理では、大きくて複雑な形状の品物を扱うので、それを冷却液中に入れると、各部の冷却程度の違いによって、変形や割れの懸念があります。
そのために、焼入れ冷却中に、品物の温度差を軽減するために、様々な冷却のコントロールが行われます。
その一つの方法が、冷却途中で品物を冷却液から取り出して、温度の均一化を図ってから次の操作をすることで、これが「中断焼入れ、時間焼入れ … 」などといわれるものです。
鋼の焼入れ中ではMs点までは軟らかい
焼入れの冷却中で、Ms点直上の温度までは品物が硬化していませんから、硬化前の適当な温度で品物を取り出すことで、品物各部の温度が平均化します。
また、Ms点以下の温度でも、マルテンサイト化は温度低下によって進むので、冷却途中に冷却液から取り出すことで、品物の温度を均すこともできます。
それらの方法によって、一様にマルテンサイト変態させると異常な変形を抑えることができます。
このように、硬い硬さが必要な工具製品の変形を制御したり、工具性能を考えた焼入れ方法は一義ではありませんが、例えば、冷却中に水や油から引き揚げて、内部や部分の温度を調整することは絶えず行われています。
それが、この中断焼入れや時間焼入れと言われる方法です。
焼入れ時の変形や割れ防止で冷却をコントロールするのは当たり前
このような冷却操作は、変形の低減や焼割れの危険性の回避、硬さ分布の改善 … などのために行なわれています。
焼入れの基本は「柔らかい組織を出さないように、一定温度まで急速に冷却して、マルテンサイト変態にかかる温度からは品物の表面温度を均一に保ちながら冷却する」ということです。
そのために、油からの引き上げ、撹拌の停止や流速の調整などによって、冷却速度を変えたり、表面からの冷却程度や内部の熱による復温などによって、温度を調節することで、変形や焼入れ状態をコントロールします。
しかし、そうは言っても、一般的に言えば、熱処理する品物の形状や鋼種で Ms点(焼入硬化し始める温度:マルテンサイト化温度) が異なるので、自動化されている熱処理設備であれば、手順や方法を標準化するのが望ましいものの、品物が雑多であれば、標準化も大変なので、水や油の浸漬時間や引き上げ時間などの操作は、経験や勘に頼る部分も多いようです。
冷却速度が必要な温度域は早く冷却する
空冷やガス冷却で焼入れする高合金工具鋼製の大きな品物などにおいては、炭化物生成による性能低下の懸念から、600℃程度までは早い冷却が求められます。
そして、品物を冷却していって、Ms点に達すると、温度の低下とともにマルテンサイト変態は進むので、速い冷却は不要です。
Ms点以降の冷却をコントロールすることで、性能を劣化させずに変形をコントロールできますが、品物の深部の温度でMs点を超えて再加熱されるのは避けなければなりません。
この品物の内部の熱で再加熱されることを「自己焼戻し」と呼ばれることもあります。
空冷中に冷却をコントロールする
中断焼入れではありませんが、空気焼入れ鋼(焼入れ性のよい鋼種)では、風の当て方や風量を変えることで変形を操作することができます。
このような特殊な冷却法で変形を抑える作業方法が特許になっている例もあります。
しかし、これに限らず、変形を重視するあまりに、焼入れ時の冷却を遅らせることで、じん性低下による工具性能を劣化させる懸念もあるので注意が必要です。
このように、工具の性能、変形の大小、冷却方法と熱処理品質などを考えながら熱処理作業は行われるのですが、その詳細は多岐にわたるので、書籍などに紹介されることはありません。
すなわち、このような標準化できないことが熱処理現場ではまだまだ残っています。
これが「技術力」「ノウハウ」といわれるものであり、それを支えているのは熱処理の作業者に負うところが大きいです。

