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熱処理品の衝撃試験|高硬さ品の試験は大変です

衝撃試験は、じん性やねばさを評価するものです。

衝撃試験の方法はハンマーで試験片を折る方法や、ねじり切る方法など、いろいろありますが、JISには試験片を折る方法の、シャルピー衝撃試験、アイゾット衝撃試験についての規定があります。

これらは、試験片をハンマーで破断したときに失われるエネルギー(吸収エネルギーという)を測定するものです。

シャルピー衝撃試験が一般的です

「シャルピー値が大きい」ということは、ねばさがあり、衝撃に対して強いという評価になります。

シャルピー衝撃試験については、JISに規定され、試験片形状についても種々のものが規定されています。

低合金鋼では2mmUノッチの3号試験片での試験が多いようです。

また、焼入れした工具鋼では、日立金属(株)(現在のプロテリアル)さんが行っている、JISにない10Rノッチの試験データが多く見られます。

硬さの低いものでは、「じん性値」という言い方で、破壊のされにくさを評価しますが、試験片の(特にノッチの)形状によって、えられる数値は全く異なります。

工具鋼などを焼入れした場合の試験もシャルピー試験が多く用いられるようになってきました。

しかし、高硬さ品になると、試験時の危険性が高くなり、数値のばらつきも大きいこともあって、近年では、プロテリアル(旧:日立金属)さんが行っている「10Rシャルピー試験片」の沿って、各社も比較することが多くなっているようです。

10Rシャルピー試験片寸法 第一鋼業図面

これはプロテリアル(旧:日立金属)さんの指導に基づいた、第一鋼業(株)さんの10Rシャルピー試験片の加工図です。

このように、ノッチ(溝)形状を大きく滑らかにして、試験値のばらつきを抑えようと考えられたものです。

これで得られたシャルピー値を「10R(じゅうあーる)シャルピー値」と呼んでいます。

それに対して、JIS3号試験片は「2ミリユーノッチ」「1アールユーノッチ」などと称されています。

もちろん、この10R試験片はJISにはないものですし、高硬さ品では加工も大変ですし、これを用いても、高硬さの試験では、試験値も大きくバラツクことは避けられません。

また、切り欠き部の仕上げ精度の影響が多いことで、ノッチをつけないで(これは「無ノッチ」と呼ばれます)で試験をしているメーカーもあります。

私の経験では、ノッチを付けないと、不思議なことに、さらにばらつきが大きくなるようなのです。

いずれにしても、高硬さの品物の試験は大変です。

何と言っても、耐衝撃性を直接数値で表現できる数値を得るための衝撃試験データは貴重なものです。

高硬さ品のじん性評価は抗折試験で評価されることもある

高硬さの品物については、プロテリアル(旧:日立金属)さんでは、抗折試験値でそれを比較することが行われています。

下は、プロテリアル(旧:日立金属)さんの鋼種における、10Rシャルピー値と抗折力の例です。

日立金属資料 シャルピーと抗折力

この図にはありませんが、抗折試験によるじん性の評価では、曲げの大きさを合わせて測定し、「抗折力×たわみ」を「吸収エネルギーの値」として比較評価をされています。

資料が折れにくいことは、材料が「ねばくて強い」ということになります。

上の図のように、特殊なノッチのシャルピー試験であっても、高硬さ品になると、試験値が小さくなって評価しにくいですし、逆に、この抗折試験では、やわらかいと試料が折れてくれないので、広い硬さ範囲での比較は大変になります。

このように、工具鋼などで高い硬さの材料評価は試験が困難なだけではなく、試験片を作るまでの過程(材料、材料取りの方向や位置、熱処理条件など)を十分理解していないと試験や正しい評価はしにくいものです。

これらの特殊鋼メーカーが公開している数値は、長い経験と結果の蓄積があって公開されているもので、ある意味で、貴重なデータと言えるでしょう。