ある合金元素を添加したときの理想臨界直径と添加しない時のそれの比を表したものを「焼入れ性倍数」といいます。
Mn、Crなどの焼入れ性を高める元素量を増すと焼入れ性倍数は大きくなります。
言い換えれば、焼入れ性倍数の高い元素を加えると、焼入れ性の高い鋼になります。

これは、焼入れ性を高める主要元素を示したものです。
例えば、炭素鋼(S45CやSK85など)に、これらの焼入れ性倍数の高い合金元素を添加すると、焼入れしたときの理想臨界直径が増えます。
ただ、下に書きましたが、手元には理想臨界直径の比較できるデータが見当たらずに、この図が残っているものを見やすく書き換えたのですが、そこでここでは、焼入れ性を高める元素には Mn Mo Cr 等があるというところを見ておいてください。
もちろん、鋼の焼入れ性(焼入れした時の硬さが高く、内部に至る硬さ低下が少ないという性質)は、炭素量の影響が最も大きいのですが(→こちらも参考に)、これらの焼入れ性を高める元素の割合などが加わることで、炭素量だけの単独の数値とは変わってきます。
さらに、焼入れ性が高くなると、残留オーステナイトが増加する傾向になります。
そうなると、通常は、残留オーステナイトの量は焼入れ硬さを低下させます。
また、製鋼時には、合金元素を均一に分散させる必要や炭化物との関連もあるので、これらを単純に増やせばいいというものでもありません。
このために、この図は、焼入れ性に対する元素を知るためのもの … という内容程度のものですね。
参考
理想臨界直径は冷却速度が無限大の時の、鋼材中心のマルテンサイト生成量が50%の鋼材直径のことですが、これがわかるデータを探したのですが手元にありませんでした。
以下は参考にみておいてください。
実用鋼でデータを探したところ、水冷や油冷データですので、少し違うのですが、ここからは、上図のような焼入れ性倍率の比率にはなっていません。
つまり、焼入れ性倍数のグラフがあるものの、現状ではこの内容がよくわからないのですが、上のように、Mn Cr Mo は焼入れ性を高める元素という点だけを知っているといいのでしょう。


上が、有効直径(中心部で所定の硬さが得られる棒径:D0)を示すデータで、その中から成分の似たものを選び、その代表成分とD0(直径mm)をみています。
このように、Niが1.8%でも、Crが1%でも、焼入れ性倍数にある比率数字が見えてきませんが、焼きが入りやすくなっていることだけはわかりますね。

