鋼が低温にさらされると衝撃値が低下します。
例えば、シャルピー試験では、破壊させた破面は、低温になるにつれて延性破面部分が少なくなって、脆性破面(ぜいせいはめん)部分が増え、衝撃値が下がっていきます。

このとき、簡便的に、破面の脆性破面率が50%になるときの温度を遷移温度といいます。

この図は日本鉄鋼協会編「鉄鋼の熱処理」から引用しています。
左図は0.2%の軟鋼の例で、シャルピー衝撃値Eは温度の低下とともに低下し、逆に、脆性破面率φは低温になるにつれて増加していることがわかります。
低温になると鋼が脆化することから、これを「低温脆性」と言います。
この図のφが50%の時を簡便的に遷移温度としていますので、この鋼の遷移温度は-3℃程度と読み取れます。
気を付けなければいけないことに、多くの鋼は、40℃以下になると温度の低下とともに衝撃値の低下がみられます。
特に、炭素量の多い焼入れ鋼などでは、常温でも脆化がおこっていることを意識していることが大切です。
この脆化する温度が低いほど「低温にたいして強い鋼」だといえます。
低温容器などに用いられるオーステナイト系のステンレスなどでは、この遷移温度は低い … ということです。
また、上右の図のように、特に炭素CやリンPが遷移温度を上げる(低温に弱くなる)ので、Cが0.5%を超える工具鋼や型鋼などでは常温でも脆くなり始めていると考えておいたほうがいいでしょう。
工具鋼などのデータは見当たらないのですが、冷凍庫内での作業をすると、ナイフなどの刃物が折れやすくなることや、熱間鍛造型などで冬季の早朝に型が割れやすい … などはこの低温脆性の影響があるのかもしれません。
炭素量が低ければ硬くて強靭な工具になりませんので、高炭素の工具鋼では対策が難しいのですが、これは、鋼が持つ性質であることを知っておくのがいいでしょう。
この対策としては、刃物などの場合は刃の厚さを厚くすることが基本になります。
また、型鋼などの場合は、充分に予熱をすることなどがあげられます。

