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真空熱処理|空気を排除して加熱する

真空中で行う熱処理の総称して真空熱処理といいます。

鉄鋼の熱処理に使われる「真空炉」は、加熱中に空気中の酸素と反応することを避けるために脱気した状態で加熱する密閉構造の炉が使用されます。

鋼の酸化や脱炭を防ぐ目的で炉中から空気を排除しているので、鉄鋼の熱処理では、窒素ガスなどを使った低真空状態のものも含んでいます。

この真空熱処理は、空気中の酸素を除去することで、品物表面に有害な酸化や脱炭がほとんど発生しない光輝状態で熱処理ができるので、近年は工具鋼などの高級鋼の熱処理の主流になっています。

宇宙のように高真空度にしない

熱処理で言う真空は、スペースシャトルや静止衛星が飛ぶ宇宙空間のような高真空状態にしているのではありません。

真空度を上げすぎると、高温で品物を加熱すると、加熱中に鋼中の合金元素が飛散するので、適度な真空状態で加熱しています。

近年では、鉄鋼の熱処理では、炉中に窒素ガスを入れて、昇温の効率化を図っている加熱炉が主体になっています。

通常使用される鉄鋼熱処理用真空炉について

一般熱処理炉の熱源は電気加熱が多く、ヒーターの熱で加熱します。

炉内を真空にすると、輻射(放射)熱だけで昇温させることになるので、熱効率も悪く、加熱時間がかかります。

そこで、空気を除去しやすくするために、微量の窒素ガスを流して、置換を図るとともに、窒素ガスの対流を利用して加熱するタイプにしているタイプが多くなっています。

さらに、冷却時も、焼入れ温度からの冷却を早める必要から、窒素ガスを高圧にした状態で炉内に吹き付けて冷却する「加圧冷却」という方法で焼入れするタイプが主流です。

標準的な炉のタイプは、1室タイプが多く、加熱室と冷却室を兼ねている場合が多いようです。

その他には、加熱室やパージ室(雰囲気を変えるための部屋)などを持った、2室・3室構造の炉もありますが、それぞれに長短所があります。

品物を入れてから、炉内を減圧させるために、多くは、2種類以上の真空ポンプを使って急速に高真空状態まで脱気して加熱します。

真空にする過程で、品物表面の油脂類や汚れが取れる … とされるのですが、油脂類を真空ポンプが吸い込むと、真空ポンプの劣化をまねくので、熱処理前の洗浄などの前処理が必須です。

さらに、洗浄の良否が製品の熱処理後の美しさに影響しますので、洗浄装置を備えています。(もっとも、洗浄も熱処理費用に関係します)

ただ、特に注意が必要なのは、黒皮(スケール)のついた品物やさびている品物は真空炉での熱処理には適しません。

鋼についた黒皮やサビは、真空度や機器を劣化させ、さらには、同時に処理する他の製品を変質させるために、真空熱処理をする製品は、光輝状態の品物であることが基本です。

真空熱処理の長所短所

真空熱処理は ①焼入れ加熱中の酸化や脱炭を抑える  ②光輝性の高い仕上がりになる … などの長所があるのですが、費用(設備費用+メンテナンス費用)が高価であるのが短所といえます。

また、窒素ガスでの冷却速度を高めるために、一気に大量のガスを流す「加圧冷却」では、大量の窒素ガスを消費しますので、これにも費用が掛かります。

この「加圧冷却」をするタイプの炉では、油冷と同じ程度の冷却性能があるタイプも多いのですが、ガスを一定方向から大量に流すために、品物に曲がり(歪)が生じやすいことから、冷却能力を押さえて、適度な流量で冷却される場合も多いようです。

もちろん、作業効率を高めるために2室、3室構造にしたり、窒素ガスによる冷却ではなく、油冷装置を備えるタイプなど、いろいろなタイプの炉が作られています。

真空炉で油冷ができるタイプはそんなに多くはありません。

油冷は、大きな品物でも十分な硬さを得られるのですが、大量の油類の使用は消防法の適応対象になり管理が大変ですし、ガス冷却の場合に比べると、表面が美しくないので見劣りするとの指摘もあります。

品物の性能をとるか、外観をとるのかがむつかしいところです。

もっとも、熱処理本来は「品質重視」と思われるのですが、意外に外観にこだわるお客様も多いようです。

真空炉には、鉄鋼の焼入れ焼戻し用のほかに、表面処理装置など、様々な真空を利用した熱処理装置があります。(写真は第一鋼業(株)さんの協力)

油冷構造の真空炉の例
油冷2室タイプの真空炉

1室加圧冷却型真空炉の例
1室タイプ1室構造の真空炉