時効硬化処理・エイジング処理などの用語も同様の内容です。
この「時効」とは、時間とともに硬さなどの機械的性質が変化することを言います。
さらに、温度を加えて、時間変態を促進させる処理を「時効処理」といいます。それに伴って硬さ、耐食性などが変化します。
時効による硬さ変化
析出硬化系のステンレスやマルエージング鋼などでは、温度を上げて(上図では820℃から空冷する)固溶化処理をすると、モリブデン、チタン、銅、アルミニュウムなどが鋼の中に溶け込んでいる状態になっています。
それを、400-600℃程度に温度を上げると、それらが析出することで硬化します。

プロテリアル(旧:日立金属)さんのマルエージング鋼の例(カタログより)
経年変化
また、焼入れ焼戻しをした製品は、時間が経過すると寸法変化や形状の変形が発生する場合があります。 これは「経年変化」と言われます。
経年変化が生じる原因は、時間的な応力開放によるものと、残留オーステナイトの分解によるものが考えられます。
焼入れ・焼戻しによって硬さを高めることは、内部の応力を高めることですので、ほとんどの場合で経年変化は発生するものと考えておかなければいけません。
応力によるものとしては、時間の経過でその応力が解放されるときに、寸法などが変化するというものです。
残留オーステナイトについては、鋼の成分によって焼入れで組織的に不安定な残留オーステナイトが生じると、それが、ほかの組織に変わることで変形や変寸が生じます。
焼戻しパラメータ
焼戻しの効果は「温度と時間の関数」で表現できます。すなわち、温度と時間によって、焼戻しが進行する … ということになります。

これはSKD61相当材の焼戻しパラメータです。
ここではパラメータを(℃+273){20+log(hr)}とした横軸にとってその硬さ曲線が示されています。
このTは温度、tは時間です。
つまり、温度と時間の関数として「硬さ」が変化していることを表しています。
通常の焼戻しの場合は、温度を基準にして、品物の大きさに応じて、適当な焼戻し時間としてその温度に保持するのですが、焼戻しパラメーターの考え方であれば、温度と時間で硬さが決まるということなので、例えば、温度を少し低い目にして、時間を長く取れば、同様の焼戻し効果(たとえば硬さ)を得られるということになります。
ただし、時間の効果は対数的で、温度による効果のほうが大きいために、通常の熱処理では、温度を変えて硬さを決める処理をします。
しかし、この図で示されるように、保持時間が長時間になれば、それが硬さに影響することになります。
普通は、エージングの熱処理条件を決める場合は、上のプロテリアル(旧:日立金属)さんのマルエージング鋼のグラフにあるように、時間を決めておいて(ここでは3Hr)、温度を変えることによって硬さなどの機械的性質を調整する方法を取ります。
つまり、長時間加熱するのは不経済なこともあって、時間を変えて硬さを調整する方法は一般的には行ないません。
経年変化は避けられない
ここで注意しておく点は、焼入れ(または溶体化処理)をして焼戻し(または時効処理)をした品物は、経年的な変化は避けることができない … ということです。
時間と温度によって焼戻しと同様の変化が生じます。
つまり、硬さ、変寸、じん性、耐食性などの変化などが時間経過とともに、複合して生じることになります。
析出硬化型のステンレス鋼(SUS630など)の熱処理
このタイプの鋼は、固溶化処理をして、比較的柔らかい状態で機械加工などの製品の成型をした後に、450~650℃程度の温度で析出硬化処理(時効処理)を行ないます。
析出硬化(や2次硬化)をする鋼種は、成分にもよりますが、400~550℃程度までの温度で、炭化物の析出・凝集によって硬さが上昇します。
そして、硬さのピークを超えて加熱すると、焼戻しと同様に硬さが低下します。
これを過時効(オーバーエイジング)といいます。
この時、析出硬化型のステンレス鋼であれば炭素量が少ないので、高炭素鋼系の鋼種と比べると、炭化物の析出硬化があっても変形が少ないという特徴があります。(しかし高価な材料です)
この析出硬化系ステンレス鋼の時効温度は、焼入れ鋼と同様に、硬さ、強さ、じん性値などをもとにして決めることになります。
JISなどでは、H900などという、機械的な特性などに応じた大まかな熱処理温度が決められています。
これは、基本的には焼戻しと同様に処理ですので、硬さを基準に熱処理温度(と時間)を考えればいいことになります。
この系統の鋼種については、JISなどを見ても、よくわからない内容も多いと思いますので、目的や用途を含めて事前に検討しておくといいでしょう。

