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鉄鋼の熱処理炉について|分類と呼び方

鉄鋼の熱処理で使用する「加熱設備」は熱処理炉または、単に、「炉」と呼ばれます。

その分類は
加熱の方法によって分類する場合(燃焼炉、重油炉、電気炉など)
加熱雰囲気によって分類する場合(大気炉、雰囲気炉、真空炉など)
構造によって分類する場合(連続炉、バッチ炉など)
用途によって分類する場合(焼入れ炉、焼なまし炉、浸炭炉など)

ですが、これらの分類も明確に区分されるものではなく、便宜的に分類している … と言えます。

以下に第一鋼業(株)さんの協力で、加熱設備の写真を紹介しながら説明しています。

これは、同社が普段呼称しているいい方で、同じような設備が増えると、呼称を変えることも行われているので、ここでは、呼び方と分類内容が関連付けられるように紹介します。

さらに、炉の分類と同様に、炉の名称(呼び方)も決まっているというものでもありません。

炉の名称は名づける側が好き勝手につけている

「炉」の分類や呼び名は、多くの場合は、製造者(あるいは使用者)が勝手につけたものなので、正式な呼び名はとくにはないということを覚えておきましょう。

もちろん、最初はメーカーが勝手に適当な名前を付けます。

その名前に、決まりや統一性はありません。

メーカーが同タイプのものをたくさん作れば、次第に名称が定着していきます。

また、メーカー名を使用者(会社)が勝手に替えている場合もあります。

第一鋼業さんの場合でも、①設備番号で呼ぶ場合、 ②設備を購入したメーカーの呼び名を利用している場合、さらに、 ③勝手に名前をつけて呼称している場合 があって、完全には呼び方が統一されていません。

以下も、特定の呼び方は決まっていないということを念頭に読んでいただくといいのですが、ほぼ汎用的で、理解できる呼び方ということです。

【台車炉】

台車炉

台車炉は、品物を台車に乗せて出し入れできるものです。

この写真の炉では最大10トンの品物を1100℃まで加熱することができます。熱源は都市ガスです。

これは、次に説明する「バッチ炉」といってもいいものですし、大気雰囲気で加熱しますので「大気炉」でもいいですし、都市ガスで加熱するので、「ガス炉」といってもいいのです。

この写真は、台車(炉床)を先方に引き出しておいて、大きな品物をクレーン(ホイスト)で吊って台車に置いた後に、加熱室に運んで加熱します。

この炉は、高温で加熱できるように、耐火レンガを多用して築炉してあり、大気雰囲気で加熱する「焼入れ用」に作られています。

一般的には、大きな炉の熱源は電気以外の、都市ガス、灯油、重油、などが用いられています。

熱源は、加熱費や温度分布などを考えて選択しますが、大型の炉になるほど、燃料費の面から、電気炉の大型炉は少ないようです。

この炉では、焼入れ加熱用ですので、焼入れする場合は、台車に乗せた品物を炉から取り出して、空冷、油冷、水冷などを行います。 写真では、手前に油槽が見えます。

【バッチ炉】

バッチ炉

1回ごとに品物を入れ替えるタイプをバッチ処理といいます。 また、横型タイプの炉を総称してバッチ炉と呼んでいます。

バッチ炉の用語の反対語は、「連続炉」というのが近い感じです。

もちろん、連続炉もいろいろな名称があって、搬送方法の違いや特徴で、様々な名前がつけられているのが通例です。

この写真の炉は大気雰囲気の都市ガスを用いた焼戻し炉で、700℃程度までの加熱が可能です。

焼入れ炉、焼戻し炉などの、用途別に鉄鋼用の炉を区分する場合、温度的には焼入れ炉や焼ならし炉はおおむね800℃以上、焼戻し炉はおおむね700℃以下、焼なまし炉はおおむね900℃以下の加熱能力があります。

焼入れ用で、900℃を超える高い温度が必要な炉は、大気雰囲気の加熱では脱炭や酸化が大きいために、大気雰囲気ではなく、ガスを用いた雰囲気炉や真空炉が使用される傾向にあります。

このように、バッチ炉であっても、その形態はいろいろあります。 例えば、炉内で雰囲気を置換する場所(パージ室などと呼びます)を持ったものや、炉内で焼入れから焼戻しまでを自動的に行う炉もあります。

それらも「バッチ炉」に分類される場合もありかすから、分類の仕方や名称もきっちりではないようです。

もちろん、炉体だけを「炉」というのではなく、雰囲気調節や真空処理などの付帯設備を含めて「炉」と称される場合もあるので、分類や呼称は決まらないのでしょう。

【ピット炉】

ピット炉

横型のバッチ炉に対して、縦型の炉をピット炉というように区別されている場合があります。 「ピット(Pit)」は穴のことですから、「穴を掘って作った加熱炉」というイメージです。

この炉のように、長尺品の焼入れ用途では、品物を吊り下げたり、真っ直ぐ立てることによって、品物の変形を少なくできるという特徴があります。

ピット炉についても、雰囲気を変えたりや冷却のための付帯装置があって、それらの特徴などを名称にするものもあり、やはり、分類や呼称も様々です。

【真空炉】

油冷装置付き真空炉  加圧冷却真空炉

真空加熱式ピット炉

真空炉、大気炉、雰囲気炉などの分類は、雰囲気によるもので分類している場合が多いようです。

真空炉は、加熱中の酸化による品物の変質を防ぐために脱気しながら加熱するものです。

第一鋼業(株)さんの鉄鋼熱処理用の例でいえば、真空炉には上のような3種類のタイプがあります。

これらはすべて電気加熱式です。

左上は油冷装置を備えた2室タイプの焼入れ炉で、右上は一般的な窒素ガスによる加圧冷却可能なタイプ、下左は加熱時のみ真空にして、焼入れする際には炉外に品物を取り出して冷やすタイプです。

「真空炉」といっても、鉄鋼用途では、宇宙のような高真空ではなく、主な目的は「脱気(空気を極力減らす)」によって表面性状を劣化させないことです。

また、真空度によって光輝性などが変わるので、目的に合わせて真空度や雰囲気状態が違います。

上2つは炉内が窒素ガス雰囲気になっていて、光輝状態で仕上がりますが、最後の写真の炉は、加熱中の脱炭を防ぐために真空を利用しているだけのもので、焼入れ時は空気中に取り出して油冷や衝風空冷をします。

そのために少しですが酸化や脱炭が生じますが、対象が大きな品物なので、仕上げ加工をするので、大気加熱など、雰囲気調整しないタイプと違って、熱処理後の仕上げ代は極端に小さくなります。また、熱処理費用も抑えられます。

現在の真空炉は、窒素ガスによる冷却するタイプが主流です。

これには、大量の窒素を圧力を上げてタンクに貯めておいて、それを一気に流して冷却する「加圧冷却」という方法がとられるものが多くなっていて、油冷に近い冷却性能を有するものもあります。

しかし、窒素ガスの圧力や流量を多くすれば、理論的には油冷に近い冷却速度が得られますが、実際には風量をあげすぎると品物が変形しやすくなるという理由もあって、油冷と同様までに強烈に冷却させることはほとんどありません。

【ガス窒化炉】

ガス窒化炉

用途別の分類でこのように呼称している例です。

ガス窒化と呼ばれる窒化は、真空による脱気をして、500℃前後の温度に品物を加熱して、そこに鉄鋼表面の窒化を進行させるガスを流して窒化処理をする表面熱処理です。

このタイプは、アンモニアの変成ガスを加えて加熱することで窒化処理をするもので、耐摩耗性向上のための窒化処理をします。

そして、窒化する雰囲気状態に、例えば、硫化水素ガスなどの異種のガスを入れることで、通常の窒化処理とは違った表面処理効果が得られますので、「窒化炉」ではなくて、ほかの呼び方をしてもいいのかもしれません。

【ソルトバス】

ソルトバス ソルトバスの焼入れ風景

これは「炉」というよりは、「槽・浴」」といったほうがいいのかもしれません。

ソルトバスは、溶融塩をポットに入れて溶かして、その中に品物を入れて加熱して、焼入れや焼戻しなどの熱処理を行う装置です。

この写真の加熱の熱源は、都市ガス、電気などで、ポットに入ったソルトを間接加熱して溶融させています。

これとは別に、常用1000-1300℃の高温に加熱する高速度鋼の焼入れ用では、ソルトの中に直接電気を流してその電流熱で加熱するタイプもあります。

写真右は作業風景ですが、例えば、温度に応じていろいろなソルトバスを用意しておいて、その中に品物を順次に入れる方法で加熱や冷却をします。

以上、加熱炉の分類と実例をイメージできるように紹介しました。