ここでは、鉄鋼の熱処理の「焼入れ」に使用する液体をさしています。
冷却剤には、水、ポリマー水溶液、油、ガス、塩浴剤(ソルト)などがあります。 液化ガスを気化して利用するために、ガスもここに含めています。
焼入れは、急冷することでマルテンサイト変態を利用して硬化させるものです。
しかし、どんな鋼種でも速く冷やすのがいいということではありません。
焼入れによって硬化しやすいかどうかを「焼入れ性」という言葉で表現します。
これは、数値などがない概念的な表現で、水などで急冷して硬化させる「炭素鋼」などの鋼種に対しては、油冷や空冷で十分硬化する鋼種は「焼入れ性が良い」という言い方をします。
鋼種の焼入れ性に応じて、早く冷やさないと硬くならない場合は冷却能力(冷却能)の高いものが要求されます。
しかし、必要以上に早く冷やすと、品物各部の温度偏差が発生して、変形や曲りが発生しやすくなります。
さらに、残留オーステナイトが増えて、焼入れ硬さが不安定になることなどが懸念されます。
その鋼材に応じて、冷却剤を選ぶ必要があります。
一般的な冷却能の順位
よく使われる冷却剤の冷却能は、一般的には 水 > ポリマー水溶液 > 油 > 塩浴剤 > ガス の順番です。
この中から、目的の硬さが得られるか、変形や割れの程度外上ではないか、冷却性能が安定か … などを見て、鋼材の焼入れ性に合わせて選択します。
さらに、ポリマー冷却剤では粘度、濃度などを、焼入れ油であれば温度特性や性能の安定性などをみて選択します。
また、冷却剤の温度、循環(攪拌)の程度などによっても冷却能が変わりますので、冷却剤の使い方は、安定した熱処理品質を得るために重要です。
下は、水と油の冷却状態をパソコンでシミュレートした例です。
少し品物が大きくなると、冷却能の差が顕著になるのがわかります。

冷却シミュレーション例
普段から冷却液の劣化を管理しておく
焼入れに使用する「水」は、汚れや温度で冷却能が変化します。
また、特にポリマー水溶液や焼入れ油は、使用するにつれて劣化し、それで冷却能が変化(低下)します。
品物の品質を決める大切なものですので、JISには冷却剤の冷却特性を調べるための「銀棒を用いる試験」などで冷却能を管理しています。
このような特殊な試験は、焼入れ剤の販売業者に依頼して、定期的に劣化の程度を管理している場合が多いようです。
しかし、普段から、テストピースを用いた焼入れ試験を定期的に行うことや、定常的に焼入れする品物があれば、その焼入れ硬さ傾向を調べることなどで、普段から冷却性能を把握しておくことは重要です。

