鋼に含まれる鉄Feと炭素C以外で、鋼中に固溶するか、または、炭化物などの化合物を形成する元素を「合金元素」といいます。
これらの元素には、鋼の性質を高めるもの(CrやMnなど)と、鋼の特性を劣化させるもの(PやCuなど)があります。
また、合金元素は、意図して鋼中に加えられるものがあります。
その反対に、意図せずに、材料(フェロアロイや鉄スクラップなど)から勝手に鋼中に入ってしまうものがあります。
それらすべては、製鋼中に成分調整をして、決められた成分の鋼が作られます。
合金元素の多くはレアメタル
鋼の性質を向上させるために加えられる Cr・Mo などの多くの合金元素はレアメタルに分類されるものです。
これらは、鉄鋼成分に加えると、強度や焼入れ性などを改善する目的があります。
しかし、合金元素の含有量は鋼の価格に影響します。 また、それらの量が多いほどいいというものでもありません。
鉄鋼の化学成分はミルシートで確認できる
鉄鋼の成分は製鋼中に分析されて決定されています。
成分はミルシートで確認することができます。
ミルシートに書かれた「%値」はレードル分析値(鋼塊になる前の溶湯での分析値)です。
そして、数値は「重量%」で表現されています。
ただ、鋼材ミルシートには、分析された合金元素のすべてが記載されていないということも知っておくといいでしょう。
普通は、需要家が要求する以外の成分値は示されないのが一般的です。
また、P(リン)、S(硫黄)、Cu(銅)などの、鋼には好ましくないとされる元素の分析値が示されているものもあります。
合金元素が鋼に与える影響(一部)
合金元素を加えることで、何らかの特性向上があるものには、C Si Mn Ni Cr Mo W V … などです。
これらの特性(長所)項目を見ると、工具鋼などでは、
1)焼入れ性が向上する: Mn Cr Niなど
2)耐摩耗性が向上する:Cr W Mo Vなど
3)耐食性・耐熱性が向上する:、Cr Ni W Moなど
4)じん性が向上する:Ni Cr Mo など
5)強さが向上する:Cr Mn Moなど
があります。
成分が違えば熱処理後の特性も違ってくる
鋼種の合金元素量は成分規格で定められます。
そして、しばしば原料の価格が変動します。
そこで、鋼材の製造原価を下げるために、現在の製鋼技術を駆使して、高価な合金元素の使用量を減らす操作も可能になっています。
高価な合金元素であれば、例えば、Moが0.8-1.2%の成分範囲であれば、その中央値を狙って作られるのではなく、この場合は、現在の製鋼技術では、0.8の下限を狙って製造することも簡単にできます。
でも、明らかに1.2%と0.8%では熱処理硬さや機械的性質が変わってきます。
だから、厳密にみれば、同じ鋼種でも機械的性質に違いが出てくるかもしれません。
これは、鋼材価格の上昇を軽減する操作などとしては仕方がないところもあります。
しかし、これが、焼入れ硬さの違いや、変寸(伸び縮みの割合)に表れます。
このように、成分の違いが熱処理にも影響が出ることを経験しています。(それ以外の要因もあります)
もっとも鉄鋼の特性に影響の大きい元素は炭素(C)ですから、原料価格の影響しないのが救いです。
ミルシートを見ただけでは鋼材の機械的性質や特性を読み取ることは難しいことです。
しかし、機会があれば、興味をもって見ていれば、いろいろなことがわかってきます。
何かの問題が生じたときに、その原因などを考えるヒントになることもあるので、ミルシート(コピーでもいい)が入手できるのなら、一通り目を通す習慣をつけておきましょう。

