鉄鋼の熱処理における結晶粒の粗大化とは、主に、Ac3(鉄鋼の変態点)をはるかに超える温度で長時間加熱した結果、オーステナイト結晶粒が大きくなることをいいます。
つまり、結晶粒度番号が 7→5 のように小さくなることをいいます。
これは、通常の加熱ではNo.7の粒度のものが 結晶粒が大きくなって、No.5になることで、結晶粒が大きくなると粒度番号の数字は小さくなります。
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(雑誌 熱処理37巻・ふぇらむNo.10から引用)
この図の例では、上左図は結晶粒が大きくなる(粒度番号が小さくなる)と降伏点が低下している例です。
また、上表は、SKD6の焼入れ温度を上げたときの衝撃値の低下の数値例が示されています。
一般的には、結晶粒が小さい方が機械的性質は優れます
実際の熱処理ではこのような高温で焼入れすることはしません。
しかし、制御機器の故障などで、品物を高い温度で加熱する事故例もあります。
だから、いずれにしても焼入れの際には、結晶粒を粗大化しないように、鋼種ごとに指定された焼入れ温度範囲を超えないように加熱しなければなりません。
もしも焼入れ時に高温に上げてしまって結晶粒が粗大化した場合は、熱処理では改善できません。
重要な工具などでは、再鍛造をして、大きくなった結晶粒を粉砕して正常に戻す方法しかありません。
粗大化した結晶粒は完全焼戻しでももとには戻らない
一部の書籍には、完全焼なましをすることで結晶粒が小さくなるという説明があります。
これは、完全焼なましによって、大きくなった結晶粒の結晶粒界(正しくは、亜結晶粒界)に新しい結晶が生まれて、あたかも結晶粒が微細化されたように見えるだけです。
ほんとうの意味の微細化ではないので、機械的性質の劣化の改善程度は小さいでしょう。
だから、これを安易に考えないようにしましょう。
重要な点は、焼入れの際に、必要以上の高温長時間加熱は避けなければいけません。

