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γ(ガンマ)鉄|純鉄の結晶構造の一つ

熱処理での「γ(ガンマ)」は、高温域での純鉄の状態の「ガンマ鉄」を言う場合と、鋼の組織の「オーステナイト」を表す場合があります。

純鉄のガンマ鉄

純鉄は温度が変化すると、結晶構造や磁性が変化します。

この「純鉄」は完全に鉄元素(Fe)だけの状態にするのが困難なことから、99.9%程度以上のFe合金は、慣習的に「純鉄」とされています。(※注1)

(注1)ただし、その他の含有元素のうち、炭素についてはFeの性質に与える影響が大きいので、0.01%程度以下のものを純鉄に扱う場合が多いようです。

Fe(純鉄)は、温度によって結晶構造が変わり、それをギリシャ文字によって次のような呼び方をつけて分類されています。

α(アルファ)鉄:キュリー点までの磁性を持つ体心立方状態のFe
β(ベータ)鉄:アルファ鉄の磁性がなくなった状態のFe
γ(ガンマ)鉄:非磁性で面心立方のFe
δ(デルタ)鉄:常磁性で体心立方(α鉄と同じ)のFe

このγ(ガンマ)鉄は、純鉄の温度をあげていった時に、それまで結晶構造が体心立方晶であったものが、910-1400℃程度の温度では面心立方晶に変わるのですが(これを熱処理では「変態」といいます)、この純鉄の安定した状態をγ鉄と呼びます。

熱処理では純鉄よりも「鋼」が主役です

工業製品などに用いられるために製造されている鉄合金のうちで、最も多く製造されているのは「鋼(はがね)」です。

鋼は鉄Feと炭素Cの合金で、鋼の性質は「炭素量」によって大きく変わることが大きな特徴です。

「鉄と炭素の合金」で、炭素量が、およそ2%程度までの鉄-炭素合金が鋼で、およそ2%以上の炭素を含むものは「鋳物」に分類され、およそ0.01%以下の炭素量のものが純鉄として扱われます。

鋼のオーステナイトの状態を「γ(ガンマ)」で表します

このことから、鋼(0.01-2%程度の炭素量のもの)の温度をあげていくと、それが面心立方晶に変化した状態は「オーステナイト」と呼ばれます。

この状態に温度を上げてから、冷却の際に速度を変える熱処理を行なうと、非常に広範囲に鋼の機械的性質(硬さなど)を変化させることができます。

例えば、オーステナイト状態から急冷(これを「焼入れ」といいます)すると硬化し、徐冷(これを「焼なまし」といいます)すると軟化します。

下図は、炭素と鉄の合金の各温度における状態を示す「平衡状態図」です。

この図によって、焼入れや焼なましといった鉄鋼の熱処理温度などの説明をされます。

鉄-炭素2元系平衡状態図の例

これは、鉄-炭素の2元の平衡状態図(ある成分の鋼の、ある温度における状態を示した図)の例で、純鉄はほぼ炭素量がゼロ%のY軸に相当する組成で、ガンマ鉄は A3点(図の911℃)からA4点(図の1392℃)の温度までの状態が γ鉄 の状態です。

また、この図にあるように、炭素などの固溶体(固体の状態で化合している状態)をオーステナイトと言います。

この言葉は、「オーステナイトになった状態から焼入れする」… などのように使われます。

オーステナイト状態からその他の状態に相変化させるのが「鋼の熱処理」なので、この「オーステナイト」という言葉は、しばしば熱処理で取り上げられる重要な言葉です。

熱処理ではしばしばでてくる「オーステナイト」という用語は、その状態を表すために、「ガンマ(γ)」と表示されたり呼称される場合も多くあります。

その他では、鋼を焼入れしても、マルテンサイト(=鋼の焼入れした時の組織の状態)などに変態(相変化)しない組織を、「残留オーステナイト(Retained Austenite)」と言い、この表現もよくでてきます。

これは γR のように「R」は小さく書くのですが、これを残留オーステナイトと言わないで、「がんまあーる」と呼称する人もいますし、「γR 」と表示されることもあります。

残留オーステナイトは、他の焼入れ組織などの急冷組織よりも柔らかく、もちろん非磁性ですし、比較的不安定な状態のものが多いので、これは「鋼には好ましくない」ものです。

さらに、「オーステナイト」には、オーステナイト系ステンレス鋼とよばれる鋼があります。

これは、低Cで、変態点(Mf点)を下げる合金元素(Cr、Niなど)を多く含むので、常温でもオーステナイト状態になっている鋼です。

非磁性で耐食性や低温特性に優れた鋼があります。