打刃物やせん断刃物などの用途に使われる用途別分類として、以前のJIS規格には「刃物鋼」という分類が規定されていましたが、現在のJISでは「合金工具鋼」に統一されて分類されています。
過去のJISに「刃物鋼」の分類として規定があったこともあって、この名前が残っているのですが、現実的には刃物に使用される鋼種は非常に多いですし、逆に、刃物鋼鋼種であっても、刃物以外にも使用することができます。
だから、現在では、「刃物に使用しやすい鋼種」という程度の意味で考えるといいでしょう。
現在でも、特殊鋼メーカーのプロテリアル(旧:日立金属)(株)さんでは、「高級刃物鋼」という名前のカタログを発行しています。
下がその一部ですが、そこには炭素鋼系、合金鋼系、ステンレス系から炭素量が3%に達する粉末工具鋼系の材料などが掲載されています。

ここでは「ノミやカンナ刃、包丁」、カスタムナイフ用などを対象にした、冷間で用いる工具鋼の鋼種が掲載されています。
私の勤務していた第一鋼業(株)さんでは、鋼板などの鉄鋼をせん断する刃物をたくさん作っていますが、これらのせん断刃物用材料は、せん断条件に応じた広範囲な条件で使われる刃物材料が求められることから、刃物鋼という分類にとらわれずに、JIS鋼種だけでなく、JIS鋼種以外の鋼種もたくさん使っていて、これらもすべて合金工具鋼に分類されるものです。
金属せん断刃物用に使われる鋼種には、高速度鋼、熱間・冷間ダイス鋼系の高合金材料が多用されます。
冷間で使用する工具では、おおむね58HRC程度以上の硬さに熱処理することができて、出来るだけじん性が高い冷間工具鋼系の材料が使用されます。
また、赤熱する鋼塊などを切断する熱間用の工具(刃物)では、45-50HRC程度の硬さがあれば十分ですので、その硬さが得られて、耐熱性の高い熱間工具鋼系の材料が刃物用材料として使用されます。ただ、熱間用途では熱間工具鋼の全鋼製の刃物ではなく、ステライトなどの耐熱合金を刃先部分に肉盛り溶接をした刃物が多くなっています。
このように、様々な工具鋼分野の材料が刃物鋼として使われるのですが、すべての性質に優れた鋼種というものはないので、切断する条件に合わせて刃物の仕様を決めなければなりません。
近年は、カスタムナイフの製作を趣味とする方も多くおられますが、近年では、従来の切れ味がよい「炭素鋼系」の材料から、ハイス系の材料やマルテンサイト系のステンレスなどの高価な鋼材を使って作る人が増えているようです。
しかし、日本刀や高級包丁などの刃物のように、特に、切れ味を重要視される刃物には、今も、炭素工具鋼や低合金の工具鋼が使用されています。
もちろん、名刀と言われる「日本刀」も、この一覧表にあるような炭素鋼に分類される成分系のものです。

