面心立方は結晶構造の一つで、 fcc と表現されている場合もあります。
鋼のオーステナイト組織がこの結晶構造になっています。

左は、黒丸部分に鉄Fe原子があるというイメージで、右は、1つの結晶単位(セル)に鉄原子が詰まっている様子を示している図です。
fcc とは、face-centered cubic のことで、面の真ん中に結晶がある立方体結晶 … という感じの言葉です。
ここで、熱処理の説明で出てくるもので重要なことは、右の図のように、面心立方晶の場合のセルに含まれる原子の数は、面にある1/2x4個と角にある1/8x8個の「4個分」のFeなどの元素で構成されています。
また、鉄の常温での状態の体心立方晶では、セルに含まれる原子数は2個 ということを覚えておくといいでしょう。
焼入れ温度(高い温度状態)になった鋼(オーステナイト状態の鋼)は、この面心立方格子の状態になっています。
もちろん、鋼は、いろいろな元素が含まれるので、この図のようにすべての黒丸がFeであるとは限らずに、ほかのCrなどの合金元素の原子に代わる場合もあります。
そのオーステナイト状態の鋼を冷却すると下図のような体心立方晶(またはそれに近い)構造に変わります。
体心立方晶では、下図のように、この原子の数を数えると、中央の1つと、角の1/8x8個で合計「2個」になっていることがわかります。

この熱処理の加熱冷却での結晶構造の変化を「変態(へんたい)」といい、結晶構造が変わることでいろいろな性質が変わります。
結晶構造の変化で鋼の性質が変わる
上は、Feという一つの元素で構成されるセルの内容ですが、鉄鋼全体の結晶構造の変化でいうと、その一部が炭素に置き換わって非常に硬くする性質を持ったり、Cr、Moなどの合金元素が鉄Fe に置き換わって合金元素の特徴が付加したり、窒素などの小さい元素がこの隙間に入り込んで硬くなど、鋼の様々な性質が変化します。
このほかに、加工硬化と呼ばれるものでは、結晶のずれが起こって硬くなりますし、焼戻しなどによって周りの元素が凝集して新しい元素として周りに絡まってくる … などもあります。
ただ、実際の熱処理で変化している状態を詳しく知ろうとすると複雑になってくるので、まずは、この面心立法晶と体心立方晶の2つの結晶構造があって、それを変えために熱処理がある … ということを知っておくと良いでしょう。
(と言っても、そのあたりの様子が、電子顕微鏡などを使っても、見えるというものでもありませんが … )

