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ミクロ組織|金属の顕微鏡組織

熱処理での組織には、「ミクロ組織」「マクロ組織」のように、区別しているのが通例です。

「ミクロ組織」は、金属顕微鏡などで拡大して観察される組織のことをいいます。

ミクロ組織に対して、肉眼やルーペで確認できる組織を「マクロ組織」と呼びます。

その観察倍率の規定はありませんが、JISのマクロ組織観察は20倍以下程度となっています。

肉眼観察やルーペ観察がマクロ組織で、それに対して、金属顕微鏡やマイクロスコープなどで、50倍程度以上の倍率で見るのがミクロ組織といっていいでしょう。

観察する試料は前処理をします

ミクロ組織は金属顕微鏡などで観察するために、通常は観察面を鏡面研磨した後に、腐食液で腐食した金属の表面を観察します。

腐食液で腐食しない場合は「無腐食」と表されます。

ただ、腐食した場合でも、特別な場合を除いて、腐食液の詳細などは、表示されない場合が多いようです。

鉄鋼の場合は、特に表記のない場合は、比較しやすいように、腐食液はナイタール(→こちら)を使って腐食する場合が多いです。

通常の観察は100~400倍程度で組織を観察します。

ミクロ組織観察は、検査する試験片の表面をエメリーペーパーなどで磨いて、番手を順次細かくして#2000番程度まで磨き上げたうえで、さらに、最終的には、アルミナの懸濁液などを用いて鏡面仕上をしてから、腐食液で腐食した表面を観察します。

この作業は、機械化もされていますが、研磨途中にもいろいろな情報がえられるので、自己品の調査などでは手作業のほうがいいのですが、そうなると、経験や熟練のいる作業です。

同じ金属組織であっても、鏡面の程度、腐食液の種類、腐食時間、観察するタイミング … によって変わってくることに留意しておく必要があります。

参考事項

真実を見極める力の大切さ

WEBに掲載されている写真などにも言えるのですが、掲載されているものすべては実際の写真ですので間違っているとは言えません。

しかし、研磨や腐食の方法、写真のとり方などによって、観察する組織の見え方が簡単に変わるということを知っておくことは重要です。

悪く言えば、意図的に組織を改変しないまでも、デジタル技術が進んでいて、推論するような組織に写真を加工することもたやすくなっているのも事実です。

このHPでもそうなのですが、写真を見やすくするために、コントラストを上げるなどの加工をしています。

このような改変や強調は説明用には必要になることもあります。

しかし例えば、事故原因を調べるという場合などでは、利害や金銭が絡んでいます。

顕微鏡による観察は真実を知るためのものなので、提示される組織写真は客観的な内容でないといけないはずのものです。

写真加工は目的を考えてなされるべき

だから、意図的に見え方を加工して事故原因などを強調するのは考え物です。

例えば、写真倍率を少し変えたり、トリミングだけでも、見え方や印象はすごく変わります。

それもあって、事故原因の究明などには、読む側にも、それらの状態や事実を読み取る力が必要になります。

真実を見る力を養う必要がある

私自身、いろいろな調査機関の報告書を見てきたのですが、大手の検査機関などでは、高度な機器を使って調査をしていることが多いのですが、その割には幼稚な内容の報告書が多々あります。

例えば、近年では、光学顕微鏡倍率を超えた機器(例えば電子顕微鏡など)を使用されるものも多くなって、小さな欠陥をうまく現出して、鬼の首を取ったように報告書がまとめられる場合も見受けられます。

それで見つかった組織の欠陥は、破壊の1つの原因になっている可能性は高いのですが、本来、通常の鋼材には、材料欠陥が皆無ということはありません。

だから、いくら早期破壊といっても、品物を使用して破損しているというのですから、外力などが作用して製品が耐えられる能力を超えて破壊につながったものですから、たまたま見つかった起点付近の微細な異常組織から破損原因を推察していくのも、非常に危ういことです。

たとえば、ミクロ的なものではなく、形状設計に無理があるかもしれないですし、外力の負荷に異常があったのかもしれないのに、ミクロ的な観察で原因を追求しがちになっている調査報告が多くなっている感じがします。

「通常品位の品物が早期破損した」となると、品物とともに、使用している環境や製品設計や使用状態を含めないで、品物だけに着目していると、一歩間違えば、真の原因を見誤ります。

変な意味でいうと、ミクロ的な欠陥は、現出しようとすると、どうにでもできるものです。

それが原因で事故に至るかどうかを見分けるのが技術力で、大局的な見方で推察しないと、アラ探しで終わってしまいます。

事故品の原因調査などで必要なのは、対策が取れるかどうか、再発防止につながるかどうか … などの発展的内容でないと意味がありません。

報告書作成は高度な知識と経験が必要な作業

しばしば間違った判断に陥りやすい例をあげると、実際の品物のミクロ組織が「標準組織」と異なっている … という点の指摘や、実態からとったシャルピー試験で標準的な値になっていない … などが、まことしやかに書かれている場合が意外と多くあります。

そして、材料や熱処理に原因があると結論付けているものさえあるのですが、組織観察などの試験とともに、使用実態に熟知しておれば、そのような安易な結論付けはしにくいものです。

ある意味で、「標準組織」やカタログにあるシャルピー値は特殊な状態のものです

実際に使用される品物の観察や試験(これを「実体試験」といいますが)とは違うということを知らないで書いたような、残念な例をしばしば見かけます。

微小欠陥が破壊の原因だ … と鬼の首をとったように小さな欠陥を見つけ出して終わっている報告書は、今後は、検査機器の向上に伴い今後さらに増える可能性があるので、読む側の知識や観察力がないと、とんでもない方向になるということを頭の隅においておいても損はしないでしょう。

破損原因の調査は経験的な知識も必要ですし、ミクロ的な試験や観察だけで明確な原因がつかめない場合には、再現実験や再熱処理試験などで客観的な原因推定することも必要です。

破損原因の調査は、長期的にみると、品質向上につながります。

もちろん調査には、費用や時間がかかりますが、徹底して調べていくと、材質変更や仕様変更につながって、製品の寿命向上ができることも多いのです。