「工具鋼」とは、主に、工具、治具などに使用される鋼材です。 JISには用途別に鋼種が分類されています。
成分や合金元素の種類や量も広範囲です。 そして、熱処理によって得られる性能も多岐にわたっています。
雑誌「特殊鋼」では、下表のように、しばしば、冷間金型用鋼、熱間金型用鋼、プラスチック金型用鋼、高速度工具鋼に分類されています。
これはあくまで便宜的な分類です。
だから、例えば、熱間工具鋼に分類されるSKD61は、冷間耐衝撃用鋼として使われるなど、必ずしもその分類された用途のみで使うというものではありません。
ただ、最初のうちは、各鋼種の特徴や短所がつかみにくいので、まずは、JISや鋼材メーカーのカタログなどの紹介をもとに考えるのがいいでしょう。
工具鋼はメーカー名で呼称しましょう
下に示す表中の鋼種を見ると、JIS品(JISにある鋼種名)に加えて、メーカーごとに、特徴のある類似鋼種が多く販売されているのがわかります。
また、たとえばプロテリアルさんでは、SLD(SKD11相当品)、DAC(SKD61相当品)など、JIS鋼種であっても、独自の表示をしています。
これらは、JIS鋼種(この場合は、SKD11やSKD61)と同等あるいは、同等以上の内容(品質)であるものだと考えていいでしょう。
逆にいえば、SKD11といっても、その名前で製造していないので、「相当鋼種」を購入することになります。
各メーカーのJIS鋼種の相当品は、JISで決められた品質を満たして、さらに品質が高いものを製造しているということです。(JISは最低基準を決めているだけですから)
このために、メーカーが変われば、同じSKD11相当品でも、JIS以外の品質や特性が違います。
特に工具鋼においては、JIS鋼種名ではなく、メーカー名で呼称したほうがメーカーの特徴を熱処理時に反映できるという利点があります。
このために、普段からJIS名で鋼種を呼称するのではなく、メーカー名で呼ぶ習慣をつけておいたほうがいいでしょう。
さらに、当然ですが、工具鋼以外の鋼種を「工具」にして使用することは全く問題ありません。
例えば、機械構造用鋼のS45Cで工具を作ることもできます。
変な言い方ですが、近年の機械構造用鋼は、清浄度や品質の安定性などは工具鋼レベルやそれ以上のものが製造されています。
だから、安価な鋼種をつかって、うまく熱処理して使えるようになれば、しめたものですね。
鋼種分類は使用する用途の目安
製鋼メーカーの大同特殊鋼さんは、鋼の製造範囲が広いので、次のように分類して製造販売しています。
①構造用鋼 ②工具鋼 ③ステンレス鋼 ④耐熱鋼 ⑤超合金 ⑥ばね鋼 ⑦軸受鋼 ⑧快削鋼
その中の工具鋼は、「切削工具、金属やプラスチックを成形する金型に用いられる鋼」として定義されています。
さらに、日本のほとんどの鋼材メーカーが加入する「特殊鋼倶楽部」が発行する雑誌「特殊鋼」のデータには、下の表にあるように、各社の主要鋼種が掲載されています。
ここには、鋼材メーカーが製造する数多くの鋼種のうち、各社が市販していて、比較的入手しやすい鋼種が掲載されています。
すなわち、これは、ここに掲載されていない鋼種は、通常では入手しにくいものと考えたほうが良いと言えます。
どんな鋼種も入手できるというものではない
工具鋼は少しの成分の違いで、熱処理によって大きく特性が変化します。
それもあって、汎用鋼として市中で販売され流通している鋼種は意外と少ない状況です。
だから、下の表に掲載されている鋼種でも、入手が困難な場合も少なくありません。
これは、工具鋼の製造される量(これは製造ロットという呼び方をされます)は構造用鋼などの汎用鋼と違って、非常に小ロットで、さらに、いろいろなサイズが製造されているものではありません。
そのために、メーカーと問屋などで形成する流通形態が決まっていて、誰でもどこででも入手できない場合も多いです。
極端に言えば、カタログに載っていても手に入らない場合があるのです。
普段に購入している鋼材店に在庫がない場合は、他の問屋さんから取り寄せてもらうなどの方法になります。
その場合はもちろん、手数料などが加わるので高価にはなることも出てきます。
このように、鋼材調達は高度のノウハウが必要になる重要な分野です。
もちろん近年では、WEBで目的の鋼材を入手できる場合もあります。
WEBでは、小口の需要であれば便利ですが、日刊工業新聞などに掲載されている鋼材単価とかなりかけ離れているでしょう。
つまり、新聞の市況に掲載されている価格は一つの目安です。
小口になるほど、加工や手数料、歩留まりの低下などで、大口価格(ひも付き価格)よりも、かなり高価になるのは仕方ありません。
ちなみに、ひも付き(メーカーと需要家が個別に取り決めているもの)でメ見ると、メーカーから購入する工具鋼がキロ単価1000円であったとしても、市中で購入するとキロ当たり3000円、さらにWEBで購入するとキロ当たり1万円以上になっていてもおかしい話ではありません。
このようなことから、いかに安く鋼材を入手できるかどうかは非常に重要なことです。 だから、鋼材を調達する担当の人は大変です。
【参考】雑誌「特殊鋼」に掲載された工具鋼一覧表





