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炭素量での鋼と鋳物と鉄の違い

鉄鋼(てっこう)とは、広辞苑では、銑鉄と鋼の総称 … とあり、ブリタニカでは、「工業的には純鉄、鋼、合金鋼、銑鉄、鋳鉄、フェロアロイ」とあります。

どうも、決まった定義がないようですが、熱処理的な意味合いでは、下の分類がいいでしょう。

鉄鋼の大分類

この「銑鉄」は、溶鉱炉で鉄鉱石から作られた不純物の多い鉄合金です。 そしてこれは、製鋼用の銑鉄と鋳物用の鋳鉄に分けられます。

その、製鋼用の銑鉄が製鋼過程を経て成分や品質が調整されて鋼製品になります。

鋼は「鉄と炭素の合金」と説明されることも多く、炭素(C)の量が特に重要で、それに各種の合金元素を加えて、様々な鋼種が作られています。

炭素量が概ね0.01%から2%のものが「鋼」に分類されます。

0.01%以下は鉄または純鉄とよばれます。 また、2%以上は鋳物に分類されます。

この「鉄」は、産業用には、銑鉄中の炭素やその他の元素を除去して製造されています。

これを「製鋼」で、「製鉄」は銑鉄を作る過程という意味合いで考えるのがいいでしょう。

鉄・純鉄

製鋼で作られる0.01%以下の極低炭素の鋼は、分類上で「純鉄」とされています。

元素のFeのだけの塊のように、ほとんど炭素などの合金をふくまない超高純度の99.999%以上の鉄(Fe)の製造は、通常行われている製鋼法ではできません。

また、超高純度純鉄の製造はコスパも悪いので、鋼との分類上で、0.01%程度以下の鋼を「純鉄」または「フェライト」と表現されています。

かつては電磁石用の「アームコ鉄」という特殊な材料名があったのですが、今では特殊ではなくなって、通常の製鋼でできるようになっています。

ここでいう「フェライト」は、フェライト磁石に使われる「フェライト」ではなく、鉄の形態を表す「フェライト状態の鉄」のことです。

ちなみに、フェライト磁石は、酸化鉄にコバルト、ニッケル、マンガンなどを混合して焼結したセラミックの仲間に分類されるものです。

鋼(はがね)と鋳物

鋼は、下の状態図に示されるように、およそ、鉄中の炭素量が2%程度までの合金です。

鋳物との区別は、(少し専門的ですが) 組織中に遊離炭素があれば、鋳物に分類されます。

そのために、炭素以外のその他の合金との化合により炭化物などが含まれる鋼の中には、炭素が2%以上のものあります。

その炭素が黒鉛ではなく、成分中に固溶又は化合しているものであれば「鋼」に分類されます。

上表の「鋳鍛鋼」は鋳鋼(鋼を用いた鋳物)と鍛鋼(鍛錬が可能な、主に中低炭素鋳物)などで、一部では焼入れ焼戻しをして使用するものもありますが、ここでは取り上げません。

鉄-炭素2元系平衡状態図の例

これは「鉄-炭素2元系状態図」の一例です。

図では、約2%以上の炭素量で、固体または固溶体の状態でセメンタイトなどの炭化物や化合していない黒鉛が組織中にあれば、「鋳物」に分類されます。

状態図の数字は大まかに掴んでいればいい

この図ではE点の炭素量が2.14%となっていますが、いろいろな状態図が公表されていて、微妙に数値が違うので、この数字は「約2%」という程度に覚えておくといいでしょう。

普段に目にする状態図は、上に示した鉄-炭素の2元素のものが多いでしょう。

これは、炭素以外の元素を含めると、状態図にあらわすのが難しいですし、説明内容も変化したのか、この炭素-鉄の状態図以外は近年ではみることがほとんどなくなりました。

この状態図は鉄-炭素のみの2元系の平衡状態図で、ある炭素量の合金の、ある温度での組織の状態を示しています。

上でいえば、矢印の0.3%Cの鋼は1000℃では「γ固溶体のオーステナイト」という状態になっていることが示されています。

ただ、ほとんどの鉄鋼種には、いろいろな合金元素が含まれます。

だから、3つ以上の元素の状態は、上の図のような「状態図」として表せませんから、この図自体が、実際の鋼とはかけ離れたものです。

だから、鋼の概念をつかむ程度以外には実用性が低いものですので、熱処理に関しては、きっちりとした数字は覚える必要もありません。

ここでは、「鋼には変態点があり、その温度で性質が変わる」「鋼の成分によって、変態の仕方が変わる」というところを見ておいてください。

2%以上の炭素を含む「鋼」

勘違いする人もいるのですが、成分的には2%以上の炭素を含んでいても、その他の合金の炭化物として組織がつくられている場合は、鋳物ではなく、鋼の分類になります。

つまり、母材の組織(これを「素地やマトリクス」といいます)が鋼の状態であれば、それは鋳物ではなく「鋼」です。(熱処理して非常に硬くなるなど、特性が大きく変わるかどうかで考えるのがいいでしょう)

例えば、高炭素高クロムのSKD1(C=2.1%、Cr=12%)や高合金粉末ハイスや粉末工具鋼などで2%以上の炭素量のものであっても、「強さ」の必要な素地部分は1%以下の炭素量ですので、それらは「鋼」に分類されます。

(参考)フェロチックや超硬合金

現在は粉末ハイスに押されて、見かけることも少なくなりましたが、硬いチタン炭化物などを鉄(Fe)または鉄鋼で固めた「フェロチック(商品名)」という材質があります。

高耐摩材料で、「鉄鋼種」に分類されていないのですが、鉄鋼と同じような熱処理(焼入焼戻し)をして硬くなるものもあります。

また、工具などに使われる「超硬合金」は、硬いタングステンなどの炭化物をコバルト(Co)で固めたものです。

これらの、フェロチックや超硬合金は、鉄と炭素が固溶しているものでないので、「鋼」には分類されていない … ということです。

超硬と鋳鉄の組織例