試験片に力を加えて試験片が破断するときに、失われたエネルギーを吸収エネルギーといいます。
吸収エネルギーを測定して、衝撃に対する緩衝性や衝撃吸収力を「材料のじん性」として評価しています。
シャルピー衝撃値はシャルピー衝撃試験機を使って、動的な力で試験片を破断するときに費やされた力の大きさがシャルピー衝撃値で、シャルピー値の単位は、J/cm2 で、面積当たりの力の大きさを測定します。
抗折試験でもじん性を評価されている
また、比較的ゆっくりと荷重を負荷する「抗折試験」も、静的なじん性としての評価に用いられています。
これは、単位が N/mm2 で、破壊時に失われたエネルギー(これも吸収エネルギーです)の大きさを測定しています。
いずれもこの試験値の大きさで「耐衝撃性」を評価されます。
言い換えると、「耐衝撃性が高い=強靭性(じん性)が大きい」という評価になります。
JISでは衝撃値を求める試験方法として、シャルピー試験やアイゾット試験などが規定されていますが、これらは「破壊時の靭性」を測定しているので「破壊靭性」という言い方をされます。
つまり、試験片を破断するときに失われたエネルギーを測定しており、破断しにくいと「じん性が高い」ということになります。
熱処理品の評価では、アイゾットよりもシャルピー衝撃試験をすることが多いようです。
構造用鋼ではシャルピーの3号試験片での試験が多く、通常は常温(20℃±15℃:JIS Z 8703)での試験値を用います。
ただ、鋼種によっては、 低温脆性の影響 がでて、試験温度が低いと衝撃値が低くなる場合があるので、特に試験温度の指定がなければ、20℃以下の低い温度での試験は避けた方が無難です。
硬さが高い鋼の試験は非常に難しい
工具鋼などで、高い硬さの衝撃値試験をすることもあります。
この場合は、熱処理条件の影響だけでなく、試験片の加工精度などの影響もあって試験値がばらつきやすく、その評価も難しくなります。
例えば、3本以上の試験をした平均値でじん性値を評価するのですが、かなり数値のばらつきが出るなど、衝撃試験の難しさや問題点はたくさんあります。
調質した「構造用鋼」などでは、JIS3号試験片での試験が多いのですが、この場合は、そんなに硬さが高くない試験ですが、数本で試験をすると、測定値のばらつきが大きい場合が多く、通常は、複数個の試験片の平均値をとるケースが多いようです。
10Rシャルピー値とは
工具鋼などで、50HRC以上の高い硬さの状態の衝撃値を知るためにもシャルピー衝撃試験が行われます。
この時、JIS3号試験片のような2mmUノッチ(2みりゆーのっち)の試験片を用いると、シャルピー値が1以下というような非常に小さな値になったり、同じ試験をしても数値のばらつきが大きくなるので、現在は、プロテリアル(旧:日立金属)さんが古くから行っていた特殊なノッチ形状が使われることも多くなっています。(JISの規定はありません)

これは高硬さの工具鋼などの試験に用いる10Rシャルピー試験片です。プロテリアル(旧:日立金属)さんの指導を受けて、私も古くから使っています。
これによると、2mmUノッチのものより、約4倍程度のシャルピー値になるので、試験した数字が大きくなるので、他鋼種との比較がしやすくなりますし、測定値のばらつきが2mmUノッチの試験片よりも少ないという利点があります。
この試験片形状はJISにはありませんし、その他のノッチでの試験値との互換性や換算による評価はできません。(もちろん、数倍して比較することも出来ません)
また、(いずれの方法でも同じですが) 高硬度材の試験をするには、加工を含めた試験費用も高価になります。
近年は、プロテリアルさんのデータも多いこともあって、他の特殊鋼メーカーさんでも、この試験形状による試験で比較することが増えているようです。
そうはいっても、これを用いるとうまくいくか … というと、そうではありませんし、いずれにしても、試験条件が違えば、数値を比較できませんから、じん性の評価方法も統一できていない状況のあります。
例えば、高い硬さの試験(例えば55-60HRCなど)では非常に結果がばらつきます。
本来は、高硬度の衝撃試験自体が難しい試験で、それもあって、プロテリアル(旧:日立金属)さんでは、58HRCを超える硬さのシャルピー値は10Rノッチの試験片でも小さい値になり、結果の信頼性も低くなるので、シャルピー試験ではなく、抗折試験をつかってじん性の評価をされている場合も多いようです。
もちろん、この抗折試験もやはり特殊な試験で、やはり、独自の試験片形状での試験が行われています。
プロテリアル(旧:日立金属)さんではφ5で支点間50mmの試験片を用いて、試験片が折れたときの荷重(抗折力)と曲がり(たわみ)の積を「吸収エネルギー」としてじん性の大きさを評価されています。

プロテリアルさんの抗折試験値の例

