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反発硬さ(はんぱつかたさ)とショアー硬さ試験機について

熱処理して品物の硬さを測る場合の、硬さ試験機(硬さ計)の測定原理を言う言い方に2種類の言い方があります。

熱処理品などの硬さを測る硬さ試験機(硬さ計)は、JISには4種類が規定され、それは、「ブリネル硬さ試験機」「ビッカース硬さ試験機」「ロックウェル硬さ計」「ショアー硬さ計」の4つです。

この中の「ショアー硬さ計」は、他の3つと異なり、「硬い品物は反発力が強い」ということを指標にした「硬さ」で、先端にダイヤモンドをつけたハンマーを品物に落として、その跳ね返る高さを硬さ値としています。

このために、ショアー硬さ計は「反発硬さ」を測定している … ということになります。

それらに対して、もう一方にはロックウェル硬さ試験機やブリネル硬さ試験機は、ダイヤモンドや超硬合金などの、硬い圧子を品物に押し付けて、その凹み程度を測る試験機は、「押し込み硬さ」を測定しているということです。

これら4つの試験機については、JISでは、それぞれの試験方法もあわせて規定されています。

ここでは、鉄鋼などの硬さ測定用の「ショアー硬さ試験機」が対象ですが、同じような仕組みで、鉄鋼用以外のゴム・プラスチック系の材料の硬さを測定する場合に用いるショアー試験機もあるので、それらとは区別しておく必要があります。

これとは別の方法ですが、反発のしかたをとらえて、鉄鋼製品の硬さを測定する試験機もあります。

例えば、品物に超硬合金の球を撃ち出して、反発させる前後の速度などを測ることなどで硬さを評価する試験機【商品名:エコーチップなど】なども製造されています。

これは、全方向で硬さが測定できるなどの便利さがありますし、いろいろな硬さに換算できる便利さがありますが、ASTM規格に準拠しているものの、JISの規定はありません。

【参考】JISに規定されている硬さ試験機については、試験機、試験方法が規定されており、「硬さ基準片」と合わせて、トレーサビリティー(国家標準の「硬さ」まで遡って管理される状態になっていること)が確立されています。

ショアー硬さ試験機による硬さ測定

この写真は、硬さ値が直読できるショアー(D型)硬さ試験機を使って硬さを測定しているところです。

円筒の中に、先端にダイヤモンドをつけたハンマーがあり、それを品物上に落としてその跳ね返った高さで硬さ値を決めるもので、硬さは数字で「直読」できるようになっています。

これに対して、跳ね返りの最高高さを瞬時に読み取る、C型 があります。

熱処理品の硬さ管理はJISの規定に沿うだけでは不十分

第一鋼業さんの場合は、硬さの管理がやりやすいように、現在では、すべてD型に統一されています。

私が在職中は、熱処理品質の管理のために、D型もC型も使用して、硬さの管理をしていたのですが、実際の品物の硬さを2種類のタイプで測定すると、違った数字になることが往々にしてあります。

もちろん、JISに規定された方法に沿っておれば、両者は同じ硬さになるように管理されています。

しかし、実際の熱処理品では、大きさや焼入れ深さ、残留オーステナイト量などで状態が変わっているために、均一な品質の「硬さ基準片」とは違うので、両者の硬さは同じではないことがしばしば起こります。

小さな品物、残留オーステナイトが多い品物、高周波焼入れ品、焼入れ深さが浅い品物などは、D型のほうが硬さが低くなる傾向になります。

ただ、このような問題は、実際起こり得るのですが、JISの範疇を超えていますので、ノウハウなどを蓄積して、「正しい硬さ」を測定できるように、各事業所が管理しています。

鋼の最高硬さは100HS … ?

「ショアー硬さ試験機を考案したショアーさんは、炭素鋼の最高硬さを100HSにして目盛をつけた」 … という言い伝えを先輩たちから聞いてきました。しかし、その後に、いろいろ調べても、そのような記述が見つけられません。

SAEの硬さ換算表の最高値部分をみると 68HRC=97HS で、それ以上は換算値がありません。

私の経験した、ロックウェル硬さで最も高い硬さは、粉末ハイスで70HRCを超える硬さが出る鋼種ですが、これを換算表の値の線を外挿すると 100HSぐらいになります。

鋼の最高硬さはショアー100?

ちなみに、その70HRCの品物をショアー硬さ試験機で測ったところ、97HS程度の値で、硬さ換算表の値とはかけ離れていたのですが、炭化物の多い鋼種なので、硬さの換算をすること自体が無理なのですが、このように、換算表が使えない場合も多いことも知っておかないといけません。

在職中には、いろいろなことをやってきたのですが、標準化の渦中の若い技術者さんは、こんなことをやらせてもらっているのか、少し気になります。

現在は、ショアー硬さは信頼できる

現在はJISにある「硬さ」のトレーサビリティー(国家標準につながる硬さに管理がされている状態)が保たれるように管理されており、また、その他の硬さ計との硬さ関係がわかりやすいように、硬さ換算表が整備されています。(換算表はASTMなどアメリカ規格のものがJISハンドブックなどに掲載されていますが、JISでは規定されていません)

過去には、ショアー硬さ計の精度を問題にする人も多かったのですが、現在では、トレーサビリティーとともに、検査員の訓練などの充実もあって、非常に高い精度で硬さの測定ができるようになっています。

実用的な硬さ範囲 30~85HS程度が常用の硬さ範囲です。

ショアー硬さ計は、上の写真(これは「D型」タイプ)のように比較的軽量で、持ち運ぶことができますし、測定筒を取り外して大きな品物の硬さを測ることができるので非常に便利です。

ショアー硬さ計の外観や構造は、私が知る限りでも、3/4世紀以上の間では、ほとんど変わっていません。

それほど、頑なに、関係者さんの努力で、ショアーの精度が守られてきていることにも驚いています。