これは過熱組織の一つで、焼入れの際に異常な高温に昇温した場合などに、特定の結晶面に沿って新しい特徴的な相がみられる組織で、熱処理的には好ましくない組織とされています。
しかし、通常の鉄鋼の熱処理では見ることはほとんどないような特殊な組織です。

これは、WEBにあった写真です。
品物が高い温度に加熱されたことによって、結晶粒が粗大化して、さらに、結晶粒界に針状の組織が成長している写真です。
私自身は、熱処理時に極端に高い温度にしてしまった失敗もたくさんあるのですが、通常の熱処理作業で、このような異常組織が生じた経験はありません。
つまり、このような高温での異常組織は非常に特殊なものと言えるでしょう。
例えば、熱電対の異常のために、焼入れ加熱温度が1000℃の品物を1150℃程度で加熱してしまった場合などでも、結晶粒が増大する程度で、このような組織は確認できませんでした。
さらに、その他の例で、SKH51をオーバーヒートさせたことがあります。
SKH51の標準焼入れ温度は1240℃以下ですが、それを超えて1280℃ぐらいに加熱すると、品物の表面の一部が溶け初めるとともに、表面にしわができます。
これはいわゆる「オーバーヒート」の不具合ですが、そのときに組織を見ても、結晶粒界が崩れる状態になっているものの、このような針状組織は見られませんでした。
ハイス(高速度鋼)で1300℃を超えて加熱することはほとんどないので、熱処理でこのような異常が起こるかどうかもわかりませんし、実際に遭遇したこともありません。
このような異常組織は、下の写真にあるような、宇宙からくる隕鉄などのように、極端に高い温度に熱せられた状態に加えて、針状組織が成長するような特殊な冷却過程を経ないと出現しないような感じの組織です。
しかしなぜか、このことばが熱処理の教科書に出てきます。

この写真はウィキペディアの記事にある写真です。
これは隕石の研磨面に見られる金属ニッケルで、きらきら光った帯状や幾何学模様が「ウィドマンステッテン組織」と表現されています。
やはりこれも、かなりの高温に加熱された状態に加えて、特殊な冷却条件でないと現れない組織のような感じがします。
この言葉は、なぜか頭に残る用語で、聞くこともあるのですが、熱処理で体験したことがないのに、なぜ熱処理用語で取り上げられているのか不思議です。
ドイツ語の Widmanstätten で、「ウィドマンシュテッテン」と書かれている場合もありますし、ウッドマンステッテンと間違った言い方で呼称されている場合もあります。

