これは、製鋼中の溶鋼が鋳型に入れられる直前に、取鍋(とりべ・とりなべ)から採取した試料による成分等の分析値のことです。
「溶鋼分析値」ともいいます。
この分析で製品の成分量などを決定するので、通常は、メーカーのミルシートにはこの値が表示されます。
つまり、溶鋼(溶湯)の状態で充分攪拌されておれば、製品になってからの分析値よりも、成分の均一性が高いので、JISなどでもこれを採用することになっています。
大量に生産される鋼の多くは連続鋳造法が採用されているので、この場合は、溶鋼の時点と製造された鋼片の各部の成分差はかなり少ない状態になっています。
一方、従来からの、溶鋼を鋳型に鋳込んで鋼塊から鋼材を作る製鋼法では、凝固の時間とともに成分が逐次変化をしていくので、特に高合金鋼になると、凝固した鋼塊の表面と中心部分では成分や組織は同等ではありません。
このために、出来上がった鋼材自体から成分分析用の試験片の採取をすると、位置によって成分や性質がミルシート値と違うことになってしまいますので、平均的な成分組成の「とりべ分析値」は、ある意味で信頼性が高いと言えます。
(雑誌:鍛造技術より引用)
もちろん、鋼材が作られる過程で、偏析などを均質化して、品質の揃った製品を作り出す技術が「造塊・製鋼技術」です。
そこで、各鋼材メーカーでは、様々な工夫や技術によって、とりべ分析値に近づけるように鋼材を製造しています。

