鋼の表面に窒素を拡散浸透させて、硬い「窒化物」を生成させて表面を硬化し、耐摩耗性を向上させる処理を「窒化(ちっか)または窒化処理」といいます。
種類や内容は多岐にわたっています
窒化処理の方法は、ガス窒化、プラズマ窒化、真空窒化、軟窒化、液体窒化 … などの、いろいろな種類や処理方法があります。
たとえば、深い窒化層を得たり長寿命化などは、窒化前の熱処理内容や窒化処理条件などで変化するので、それがノウハウになっているものも多いですし、用途や鋼種で適不適もあります。
また、独自の処理名をつけて窒化処理を実施している会社も多く、処理の特徴などもそれぞれ異なっているようなので、それらを事前に比較検討をして実施するのがいいでしょう。
さらに、それぞれに、表面に生成する窒化物層の状態をかえたり、硬さ以外の特性をもたせる表面層を作るなどで、金型などの使用条件に適合するように処理条件を変えた処理なども幅広く行なわれていますので、事前の打ち合わせも大事です。
窒化の温度は500℃前後
鋼の表面硬化としては、浸炭焼入れ、高周波焼入れなどがありますが、これらは、800℃以上の高温に加熱します。
それに対して「窒化」は、500℃前後の処理であるので、通常の全体熱処理(焼入焼戻しなど)をしておいてから、表面を研削などで仕上げた状態で、追加で行う熱処理です。
窒化によって高い表面硬さを得るためには、Al,Cr,Ti,V,Mnなどを含む鋼が用いられます。
窒化用鋼の SACM645 という「窒化鋼」があります。
これを使用する場合には、内部硬さ(調質硬さ)は30HRC程度にしておいて、最終的に窒化処理をします。
もっと高い内部硬さが必要な工具などでは、これらの窒化のために必要な元素を含む工具鋼なども用いられます。
処理温度は500~600℃程度のために、事前の焼入れ焼戻しでは、窒化処理温度以上の焼戻しをしたものに窒化します。
窒化によって、表面の硬さは焼入れによる硬化をはるかにしのぎ、SACM645では1100HV程度以上の表面硬さになります。
また、処理温度が500℃以上であれば、浸炭や高周波によるマルテンサイトによる硬化とは異なり、焼戻し温度近くまで昇温しても、表面硬さが落ちにくいという特徴(耐熱性)があります。
ただ、表面熱処理であっても、浸炭や高周波焼入れでは、1mm以上の硬化層がえられるのに対して、窒化では0.1mm程度以下の浅い硬化層しか得られません。
窒化後の特性は処理方法で異なる
窒化の方法、鋼種、処理温度、処理時間で変わります。
ここでは紙面の関係があり、一般的な内容のみで、詳しい説明はしませんので、書籍等を参考にするか、処理業者に問い合わせると良いでしょう。
窒化した品物の寿命などの効果については、単に硬化深さだけによるものではなく、その窒化深さや窒化したときに生じる硬化層の性状などによって効果(品物の寿命)は変わります。
そのため、窒化の状態を説明する際には、表面の「化合物層(外部窒化層)」と「拡散層(内部窒化層)」について、断面硬さ推移や顕微鏡組織から、その良否などの、処理の特徴を説明されることも多いようです。
窒化層には、たとえば、化合物層は顕微鏡で見ると腐食しにくく白く見えることから「白層」とも呼ばれる組織が出現します。
一般的には脆い組織のために、これをうまく利用するか、あるいは、これを現出させない様にして硬化深さなどを調節する方法があるのですが、これは、処理の条件が重要になります。
軟窒化
「軟窒化」は窒素とともに炭素を浸透させる処理です。
ガス窒化など、窒素だけを浸透させる処理に比べると、硬化層は薄いという問題はあるものの、製品寿命の増大効果があるなど、様々な特徴があります。
このほかにも、窒化層や化合物層を多層化することなどや、その他の表面処理を複合させる表面処理などもあります。
これら以外にも、製品の寿命を長寿命化させる処理や研究もたくさんある、これから発展していく熱処理分野でしょう。
コスパを考える必要も
そしてこれら、表面処理の全般に言えることですが、通常の熱処理に加えて表面処理の費用は結構高価です。
だから、それを付加しても、費用に見合った寿命などの効果が得られない場合も出てきますが、その適応条件を見るけるのもノウハウの一つと言えるのかもしれません。
