鋼の割れや傷を検査する時に行うのが「探傷試験」です。
これには、「染色探傷試験(カラーチェック)」「磁粉探傷試験(マグネチェック)」や、内部欠陥を調べる「超音波探傷試験(エコーチェック)」などのほか、X線その他を使ったいろいろな方法があり、JISにも試験方法が定められています。
染色探傷試験
このうち、表面の傷や割れを検査する染色探傷試験は、赤い浸透液を品物の表面にかけて、それを白い現像液で見やすく現出させるもので、簡単に製品表面の割れが確認できます。
しかし、非常に小さいクラック(割れ)を見つけるには熟練が必要です。
磁粉探傷試験
磁粉探傷試験も同様に、表面の割れや傷を調べる試験です。
鋼に磁気を加えると割れの部分に磁力が集中することを利用して、表面に出ていない傷(表層近くにある地きずなど)などを現出することができます。
熱処理品では、蛍光磁粉を用いる場合が多く、鋼材に電流を流して、暗部(暗室など)で検査液(蛍光磁粉)を検査部位に流して、ブラックライト(紫外線ライト)を当てると、キズがあれば現出しますので、目視またはルーペなどで調べます。
超音波探傷試験
内部の傷を調べる「超音波探傷試験」は、製鋼時に鋼の内部に残留している「地きず」などを調べることができます。
超音波を鋼に当てて、そのエコーから内部の不均一な部分を見つけることができます。
探傷試験で発見される欠陥は限られる
いずれの試験も、小さな傷の検出には限界があり、熱処理前にこれらの試験をやっていても熱処理で表面傷からの割れが生じる場合もあるので、探傷試験で表面や内部に傷がないからと言って、焼割れなどが起きないという保証はありません。
近年の鋼材は非常に良くなっている
近年は鋼材自体の品位は、昭和年代のものに比べて格段に良くなっています。
特に、量産されている鋼では、素材(熱処理前の鋼材)に起因する熱処理の不具合はほとんどなくなりました。
しかし、量産品でない「工具鋼」などでは、ときおり地きずや圧延傷などの問題がでることがあります。
筆者の記憶でも、1990年ごろまでは鋼材の地傷などで受け入れ時に探傷検査をすることもありましたが、自社で機械加工を行っている加工品では、機械加工中に割れやキズのほとんどが発見できるし、鋼材メーカーでは鋼材の超音波探傷検査を自動化されて行われていることもあって、探傷試験をして受入れ検査をすることはほとんどなくなりました。
熱処理品の出荷検査についても、昭和年代には、しばしば、鍛造したままの肌の品物やサビなどがついたままの品物を熱処理することも多かったのですが、近年は、大気炉(大気雰囲気の加熱炉)でも、表面状態の悪い品物は熱処理しなくなってきたために、熱処理での割れも激減しており、顧客からの要求で、完成品の出荷時に探傷検査を要求される場合を除いては、通常はほとんど、目視での確認だけで、探傷検査をすることも少なくなっています。
それほどまでに鋼材の品質が向上していますし、熱処理での問題も減っているのですが、先程も書いたように、完全無欠の材料はありませんし、探傷試験の限界もあるので、探傷試験結果に異常がなくても、熱処理による割れや内部欠陥による不具合は皆無ではないということを頭に入れておかなければなりません。
