高マンガン鋳鋼(または高マンガン鋳物)などを固溶体化処理することを「水靭(すいじん:水靭処理)」といいます。
これは、品物をオーステナイト状態になるように赤熱加熱した温度から急冷(普通は水冷)をする処理です。
これを行うことで、常温でも安定したオーステナイト状態になります。
マンガン鋼について
JISなどに規定されたマンガン鋼(SMn***)は、C:0.5%以下、Mn:2%程度以下の成分の鋼です。
しかし、ここでいう高マンガン鋼は、0.8%以上のC量で、Mnを大量に(10数%)加えた鋳鋼です。
これは、常温ではオーステナイト状態になっています。ただ、軟らかいオーステナイト状態ですが、機械加工が難しい、「特殊な状態」になっています。
鋼のうちで、常温でオーステナイト状態のものは、オーステナイト系ステンレス鋼がよく知られています。
これらの多くは0.1%C以下の低炭素の鋼で、そこに、Cr・Niを多く含有することで常温でオーステナイト状態になるようにした成分系になっています。
オーステナイト系ステンレス鋼は、耐熱・耐酸化性が非常に高い鋼で、低炭素の鋼なので、そんなに硬くはありません。
しかし、この高マンガン鋳鋼は、炭素量が高いので、「鋼」ではなく、「鋳鋼」に分類されます。
これは、鋳型を用いて鋳造するか、溶接棒に加工して、耐摩耗材として肉盛溶接して使用します。
このような特殊な成分で、常温でオーステナイト状態にあって、非磁性で比較的柔らかいはずなのですが、機械加工できません。
変形を加えると加工硬化して表面が非常に硬くなる性質があります。
この性質を用いて、土木機械の切り刃部分や爪の先端などに鋳鋼品が用いられます。
また、摩耗部分の補修用にも、肉盛り溶接用の溶接棒が用いられます。
掘削用のフォークなどで、土砂や石を割るような条件では、工具先端に受ける力で変形をさせると、非常に硬い組織に変化します。
変形させると硬くなるので、通常のバイトなどによる機械加工はできません。
この鋼は、鋳込み状態では脆い状態であるので、オーステナイト化温度(900~1000℃程度)に加熱後に水冷することで、安定したオーステナイト状態の鋳鋼(または鋳鉄)になります。この処理が「水靭」です。
通常は、そのオーステナイト状態のままで使用されますが、機械加工はできないので、成形加工が必要な場合はグラインダーなどで成形します。

